【AI怪談 四十話目〈新世界〉 弥太郎】
目覚めた時は、自分が何処に居るか把握できなく、まだ夢の続きかと疑うしかなかった。
そういえばあの人は「君の世界は変わる」と言っていた。
あの人が言ったその言葉を、酒の席での他愛もないジョークだと思っていた。
まさか本当に変わるなんて……。
ここは海の中なのだろうか?
私は自分の腕を見る事ができない。
そもそも腕は付いてないみたいだ。
いったい私は、今どんな姿に変わり、どんな世界にやって来たんだろう?
前に進んでも水ばかり。
上も下も水ばかり。
私は四方を水に包まれている。
でも、息は苦しくない。
呼吸は出来ている。
何か……何か、この状況が楽しく成って来た。
私はこれからずっと、この水の中で暮らすのだろうか?
それも悪くない。
この世界は……この新世界は、私が望んでいた世界なのかも知れない。
私は水の中を漂い、このままこの新世界を楽しむ。
あと僅かの寿命が尽きるまで。
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