【AI怪談 三十八話目〈たこ焼き〉 弥太郎】

具は何が良いか聞かれた客は、返答に困った。


ここは、たこ焼きだ。


蛸以外に何か有るのだろうか。


試しに客は烏賊をたのんだ。


すると店主は「うちは、たこ焼き屋だ」と怒った。


もっともだ。


なのに何故、具材は何が良いか聞いたのだ。


客は暫く考え「なるほど。そう言う事か」と思い、「ネギと天かすと紅生姜」と言う。


店主は「そうじゃない。どの部位だと聞いてんだ」と更に怒った。


客は「部位? 足以外も有るのか?」と聞いた所、うちは「足以外がメインだよ」と言ってきた。


客は蛸の足以外の部位など思い付かず、店主に「任せる。涎が出るほど美味い部位で」と言った。


店主は「本当にそれで良いんだな」と言った。


店主は注文を受け、軽快な手捌きで鉄板のたこ焼きを回す。


客は良い匂いにさっそく涎が出てきた。


綺麗に船皿に盛り付けられた、たこ焼きが客の前に出される。


客は一つ目を一口で頬張り、「ハフハフ」言いながら食べきった。


本当に美味かったみたいだ。


そのまま次々と頬張り、あっという間に一皿たいらげる。


客は「最高だったよ。今の具は、蛸のどの部位なんだい?」と聞いた。


店主は「注文通りだよ」と言った。


客は意味が分からず、もう一度聞き返すと、店主は「蛸の涎が出る所。唾液腺だ。ヒョウモンダコの唾液腺だからテトロドトキシンがいっぱい詰まった部位だよ」と言った。


それを聞いた瞬間に客は息が出来なく成り、まるで茹でた蛸のように顔を真っ赤にしながら椅子から転げ落ちた。


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