【AI怪談 三十六話目〈ほっぺツンツン〉 一葉】

そのほっぺには針が千本付いていた。


まるで針山のようだ。


その針をツンツンすると痛みと共に血が流れる。


力を入れると、針は頬肉を突き抜け口内まで届いてしまう。


分かっていたが、女の子は我慢できず一本だけツンツンを繰り返した。


針は一センチほど進み、血が吹き出る。


女の子はそれを見て大いに喜び、ほっぺに針が付いた男は悲鳴をあげた。


女の子は再び違う針を一本ツンツンする。


再び男の悲鳴があがる。


この光景を女の子の母親は公園のベンチに座ったまま、黙って眺めていた。


女の子が「写真撮って」と言っても、母親は無表情で無視した。


女の子は納得いかなかったのか、両手のひらを使って残りの針を全て男の人のほっぺにめり込ませる。


男は倒れた。


この光景は一箇所だけでない。


公園中で同じような光景が幾つも見られた。


どの母親も、子供のこの行為を注意することなく、黙って眺めている。


倒れていた男の一人が立ち上がった。


男の一人は「さあ、ほっぺツンツンを続けて」と笑顔で女の子に言った。


その男の笑顔は、例えようのない悍ましさだった。

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