【AI怪談 三十五話目〈平和〉 裕香】

赤い空。


赤い海。


ひび割れた大地。


吹き荒れる雨風。


見渡す山々には草木一つ生えていない。


そんな平和な風景。


そこに立つ一人の少女は、困惑の表情を浮かべている。


これは夢の中なのか、それとも現実なのか、判断がつかないのだろう。


ここには醜い争いや、悲しい災害は一切無い。


有るのは平和だけ。


少女は元居た場所に戻りたいので有ろうが、そこに本物の平和は無い。


何かを生み、何かを作る事は平和を乱す事。


これ、即ち生活。


生きて活動する事は、本物の平和を否定する事と成る。


本物の平和を求めるなら、少女は此処を動くべきでは無い。


例え大事な命を無くそうとも。


命を紡ぐ事は、平和を乱す。


両立はしない。


命は何時も争っている。


命は常に争っているのだ。


平和な命など無い。


無い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る