【AI怪談 三十四話〈希望〉 慎也】

件の人物に会うまで、女は微かな希望を抱いていた。


女の悩みの種は医師や大学教授、僧侶や祈祷師、研究家や最新のAIまでもが匙を投げだすほどの代物だったから。


やっと見つけたその人物は、女を見るなり不敵な笑みを浮かべる。


勝算ありと見たのだろうか。


その人物は持っていた真四角のジェラルミンケースを円卓の中央に置いた。


なぜかそのジュラルミンケースには無数の小さな穴があいており、カタカタという音を響かせながら細かく振動している。


「他言しないように」と女に釘を刺さしてから、その人物は複雑そうな鍵で錠をこじ開けると、中から不気味な生物を取り出した。


タブロイドでも見た事ない、頭が三つの白カケスだ。


カケスの頭の一つは、女を見るなり「手をくれ」と言った。


もう一つの頭が「嘘だよ。大丈夫だよ」と言った。


最後の頭が「死ね」と言った。


女が困惑していると、件の人物が「どの頭を選ぶ?」と尋ねて来た。


女は迷う事なく「二番目」と言った。


だが、どうやら大丈夫という事が嘘だったみたいで、女は手足と首を胴体から捻じり取られて即死した。


一番目を選んでいたら手だけで済んだのに、残念。



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