【AI怪談 三十四話〈希望〉 慎也】
件の人物に会うまで、女は微かな希望を抱いていた。
女の悩みの種は医師や大学教授、僧侶や祈祷師、研究家や最新のAIまでもが匙を投げだすほどの代物だったから。
やっと見つけたその人物は、女を見るなり不敵な笑みを浮かべる。
勝算ありと見たのだろうか。
その人物は持っていた真四角のジェラルミンケースを円卓の中央に置いた。
なぜかそのジュラルミンケースには無数の小さな穴があいており、カタカタという音を響かせながら細かく振動している。
「他言しないように」と女に釘を刺さしてから、その人物は複雑そうな鍵で錠をこじ開けると、中から不気味な生物を取り出した。
タブロイドでも見た事ない、頭が三つの白カケスだ。
カケスの頭の一つは、女を見るなり「手をくれ」と言った。
もう一つの頭が「嘘だよ。大丈夫だよ」と言った。
最後の頭が「死ね」と言った。
女が困惑していると、件の人物が「どの頭を選ぶ?」と尋ねて来た。
女は迷う事なく「二番目」と言った。
だが、どうやら大丈夫という事が嘘だったみたいで、女は手足と首を胴体から捻じり取られて即死した。
一番目を選んでいたら手だけで済んだのに、残念。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます