四日目 リモート怪談中 その弐

「なんか、みんな怪談らしくないタイトルだね」


 そりゃ仕方ないだろう。

 仲間が死んだんだ。

 怖いタイトルなんて付けれる訳がない。

 お前だけだよ、緋黒。

 中学の頃から思ってたけど、緋黒だけ明らかに他の人と感性が違う。


「あと、魚留さんって、飾君といつもタイトルが似てるね。最初の時も〈闇路〉と〈夜道〉だったし」


「そ、そんな事ないと思う。だって二日目は〈アパート〉と〈透明人間〉だし、三日目は〈空洞〉と〈二人乗り〉だったから全然違うじゃない」


「ふーん。因みに僕の怪談の三日目のタイトルは?」


「えっ? あ、ご、ごめんなさい。覚えてない……」


「だよね」


 現在午前零時四十分。

 何時もなら雑談で盛り上がっている時間だ。

 だが、今日は沈んだ重々しい空気。

 何だか時間が経つのも遅く感じられる。

 このまま終了にしようとしたが、イチハが「怖いから何時もどおり一時までお話しよう」と言ってきたので、続ける事にした。


「あーあ。今、突然モニターに陽斗が現れへんかなー。『はい、ドッキリでしたー』って言いながらな。ムカつくけど、その方が全然嬉しいわ」


 本当にそう思う。

 アイツが死んだとは、とても思えない。

 ついこの間まで一緒に遊んでいたのに……。


「なあ、希梨々。明日、叔母さんの所に行って何をどうすんのや?」


「一応現在の状況を説明するわ。叔母さんなら私を見ただけで直ぐに事情を飲み込むかも知れない」


「それ、叔母さんも下手したら巻き込むんやろ。大丈夫か?」


「大丈夫よ。私と叔母さんが組めばどんな怪奇現象でも解決できるわ」


「どうだか……」


 緋黒はモニターを見ておらず、どうやら机の上でタロットカードを広げて占いをしているみたいだ。

 そして占いをしながら希梨々に嫌な質問をする。


「ねえ、山之辺さん」


「なによ」


「山並君の幽霊は今、ココに居る?」


 その場の空気が凍る。


「ああ、リモートで皆離れているから、ココって言うのは変だね。じゃあ、こう聞くね。山並君は今、誰かの部屋にお邪魔してる?」


 凍った空気に罅まで入った。

 イチハは両手で口を押さえ、再び泣き出しそうである。


「……残念ながら」


「そう。なら生きてる可能性も有るね。良かった」


 緋黒は嫌味にも取れそうなニヤけ笑いをした。

 希梨々の方は、それを特に気に留める様子はない。


「みんな聞いて。明日以降、私が怪談会に参加できなくても気にせず続けて。絶対よ」


「どういう事?」


「さっきも言ったけど、もし、これが霊的現象ならかなりの相手なので除霊に二、三日はかかると思うの。けど必ず何とかして戻るから怪談会を止めない方向で動いて」


「……つまり、それって、希梨々が明日不参加なら、お化けが絡んでいると考えていいんだね?」


 希梨々は何も言わず頷いた。

 口を押さえたままのイチハが、激しくむせび泣く。

 俺は心の底から明日、希梨々がモニターに現れる事を願った。

 そして未彩の無事も……。

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