【AI怪談 三十話目〈献花〉 裕香】

あれはまだランドセルを背負っていた時の頃。


あぜ道を歩いていると前方から見知らぬおじさんがやって来ました。


立派なスーツを着ていて、とてもあぜ道を歩くような姿ではありませんでした。


そして、その方はとても不思議な事を私に言って来たのです。


「二十年前のあなたに献花を送りたい」と……。


私は何の事か意味が分かりませんでした。


おじさんは両手いっぱいに持った花を子供の私にプレゼントしてきました。


それだけです。


私が花を受け取ると、嬉しそうに去って行きました。


あれから二十年。


もしかして、私は死ぬのでしょうか。


あのおじさんは、タイムスリップして来た、この時代の人だったんでしょうか。


不安に成って母に初めてその事を告げると、それは違うと否定されました。


そのおじさんは自分の元彼だと、母は悲しそうな顔で教えてくれました。


先日亡くなったそうです。


母は昔の写真を見せてくれました。


間違いなくあの時、私に花をプレゼントしたおじさんです。


でも、どうしてあの時、私に献花を渡して来たのでしょう。


そういえばあの後、私はもらった花をどこにやったのでしょうか……。

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