【AI怪談 二十九話目〈除霊〉 希梨々】

それは樹齢半世紀の木。


数多の霊が宿っていても可笑しくない。


高層は切ってはならぬと解く。


だが町の偉い人、工事を請け負う偉い人、道路を管理する偉い人、全てが高層の言う事を戯言としか受け止めない。


高層は除霊を断り、「どんな事が有っても知らぬぞ」と、言い放った。


高層の言葉は正しかった。


翌日、道路を管理する偉い人が車に引かれ亡くなる。


次の日、工事を請け負う偉い人が作業台から転落して亡くなる。


その次の日、町の偉い人が住民に撃たれて亡くなる。


人々は祟りだと恐れ、誰もその木に近づく者は居なくなった。


国の偉い人は困った。


その木を伐採しないと国が発展しない。


何より自分にお金が舞い降りて来ない。


国の偉い人は自らその木を切り倒す決断をする。


護衛を沢山引き連れ、事故に遭わぬよう再三の注意を払った。


そして慎重に慎重を重ねて木の側に来る。


国の偉い人の耳に唸り声が届く。


気にせず国の偉い人はチェーンソーを振りかざした。


その時、轟音と共に稲妻が光り、樹齢半世紀の木に亀裂が入った。


チェーンソーの刃を入れる前に木は砕け倒れたのである。


それを見た国の偉い人は、その場にへたり込む。


稲妻が落ちる前、国の偉い人は見たのだ。


その木に宿る先人達を。


国の偉い人はそれより層の道へと進む。


その樹木を弔う為に。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る