【AI怪談 二十五話目〈鬼ごっこ〉 弥太郎】

ここまで逃げれば、もう大丈夫だろう。


何度もそう思った。


けど、アイツは必ず私を見つける。


どんなに遠くに逃げても。


どんなにうまく隠れても。


何故か私を探しあてる。


最初は冗談のつもりだった。


退屈だったので遊びのつもりで言ったのだ。


まさか本気にするとは思わなかった。


私を捕まえたら命をあげると、軽々しく言った事を今は深く、深く後悔している。


あれから八年、国内、海外問わず逃げた。


変装、偽名、整形も幾度となく繰り返した。


だが、アイツは必ず私の目の前に現れる。


捕まったら終わり。


ゲームオーバー。


今回も私は必死に逃げた。


乗り物を乗り継ぎ、全てを放り出して逃げた。


何時もアイツは捕まえる寸前で速度を落とし、私を見つめながら薄笑みを浮かべる。


そして私をわざと逃がす。


何時でも捕まえられる自信が有るのだろう。


本当は捕まえる気は無いのかも知れない。


そう思った事も有った。


だが、ギリギリまで近づいた時、殺意の目で鎌を振り下ろしてきた。


間違いなく殺す気は有る。


だから私は逃げる。


今日も逃げる。


どちらかが死なないかぎり、この鬼ごっこは終らないだろう。



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