【AI怪談 二十二話目〈生贄〉 緋黒】
色とりどりの紐が舞う。
民族衣裳を着た男達が軽やかに踊った。
見たことない楽器が音楽を奏でる。
どこか懐かしい、小さい時に聞いていた大好きな祭り囃子に似ていて、少年は楽しく成ってきた。
少年はこれから自分に起こる事を理解出来ていなかった。
特に束縛もされていない自分が、まさか生贄だとは思っていなかったのだ。
少年は促され、並んだ松明の間を歩いた。
少年の歩く先には、湖が見える。
夜の湖畔は驚くほど静粛していた。
後ろから聞こえる音とは、別の世界が広がる。
少年が畔に辿り着くと、湖の真ん中辺りに静粛を崩すかのような波紋の連続が現れた。
やがて波紋の中央に凄まじい飛沫が上がり、中から大きな大蛇が首を掲げなから現れる。
大蛇は首をもたげると、二又の舌をチロチロ出しながら少年を睨んだ。
少年はやっと自分の立場を悟り、お祈りをする。
そんな少年に大蛇はゆっくりと頭を近づけた。
少年は躊躇わず、大蛇の背に乗った。
大蛇は少年を背にしたまま、静かに湖の底へと沈んでいく。
波紋が消えると、再び静粛した湖に戻った。
その間も、何事も無かったかのように民族衣裳を着た男達は、音楽に合わせて踊っていた。
色とりどりの紐が、蛇のように舞う。
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