三日目 リモート怪談中 その弐

「……何か、気味悪い怪談やな」


「今の怪談?」


「怪談……かな?」


 これまでの怪談話も、ちょっと変わった話が多かったのだが、何か今のは特に異質だった。

 モニターに目をやると、希梨々が腕組みをしながら首を傾げている。

 希梨々には霊感がある。

 まさか……。


「希梨々。まさか、今のは本物の幽霊が……」


「うーん……わかんない」


「えっ?」


「霊的現象なのかな? 正直わかんない」


「プッ。頼んない霊能者さんだね」


「うるさいわね、緋黒。こういう怪談会をしていたら必ずお化けが寄ってきて、小さな霊的現象ぐらいは起こすのを貴方も知ってるでしょ?」


「いやあああぁぁぁ!」


「落ち着いて、イチハ。大丈夫だって。私が察知できないぐらいだもん。もし、これが霊的現象だとしても大したお化けじゃ無いって」


「全然大丈夫じゃあなーい!」


 希梨々の発言にイチハだけじゃなく、俺も焦った。

 怪談会してたら少なからず本物のお化けが寄って来るのかよ。

 それは聞いてないぞ。


「でもアレやな、今の怪談。何か、向こうの世界から俺等に電話して来てるような、ホンマきっしょい怪談やったな」


「あれ? 何、弥太郎、ビビってる?」


「ビビってへんわ。ただ、ちょっと――」


 ♪♫♫♫♪♫__


 突然、手元に置いていたスマホの着信音が鳴り、身体が反射的にビクッと動いてしまった。

 しかもモニターに映っている全員が一斉にビクッとしたとこを見ると、スマホに着信が有ったのは俺だけでは無いようだ。


「メールだ……」


「私、マナーモードにしてたけど、皆と同じタイミングで振動したわ……」


「こ、こんな時間に……いったい誰?」


 電話の怪談のせいで、薄気味悪い嫌な空気に成っていた所に、追い打ちをかけるような着信音が鳴った為、それぞれが緊張を隠せない様子だった。

 本当に誰だ?

 真夜中に俺達全員にメールを送って来た人物は……。


「もう。なに怖がってるのよ。こんな時間に私達に一括メールする奴なんて、一人しか居ないでしょ……ほら、やっぱり」


 未彩が平気な顔してスマホを見ているので、俺も恐る恐るだがスマホを手にして送信者を確認した。


「あっ!」


 確認した送信者名は『陽斗』。

 そりゃそうか。

 未彩の言う通り、この時間、このメンバーが眠らずに怪談会をしている事は、陽斗しか知らないのだ。

 陽斗からのメール内容は、『怪談会盛り上がってる? 俺はそろそろ寝る』という、ただの退屈と寂しさを紛らわす為の『おやすみメール』だった。


「クソッ。アイツ脅かしやがって」


「何言ってんの。偶々電話の怪談の後だったから、皆が必要以上にビビっただけでしょ。さあ、怪談会再開しましょう。時間ないわよ。次は誰の番?」


「僕だね」


「緋黒からね。ここからはノンストップでラストの私まで進みましょう」


 怖がる素振りを一切見せない未彩が、びくびくムードに成っていた皆を仕切り、怪談会を再開させる。



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