【AI怪談 二十話目〈空洞〉 慎也】

クローゼットを開けると、大きな穴が空いていた。


前日まではこんな穴は無かった。


屈めば人一人が通れるほどの大きさだ。


気が付かない方がおかしい。


いつの間に出来たのだろう。


不思議に思い、中を覗いた。


暗闇が続くばかりで、奥に何が有るかよく分からない。


俺は懐中電灯を取り出し、再び穴を覗いたのだが明かりは届かず暗闇のままだ。


どうも気になり、暗闇の穴の中に屈みながら半身だけ進んだ。


異臭がした。


酷い腐敗臭だ。


もう少しだけ進むと、床が粘膜のようにネットリしだした。


これ以上は危険だと思い、引き返そうとするが、床の粘着で身動きが取れない。


しばらくすると、穴の奥から生暖かい風が異臭と共に流れて来た。


俺は自分の運命を悟った。


俺はこのまま、クローゼットの空洞に飲み込まれるのだろう。


空洞の奥から、消化器官が蠢く音がした……。

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