二日目 リモート怪談中 其の弐

「あわわ、な、何で? 何で主役のうさちゃんを殺すの?」


「あのー……イチハ。何で〈ぴょんぴょん〉なの?」


「どうせ『くまさん』とか『お人形さん』とか入力しても怖いのしか作らないんでしょ? でも、流石に〈ぴょんぴょん〉なら可愛いお話しか作れないと思ったのぉー! なのに、めちゃくちゃ怖くしてぇ……どうしてそうなるの? AIって、ひょっとしてイチハより馬鹿じゃない? サイテー!」


「むしろ〈ぴょんぴょん〉で怪談を作ったAIを褒めてやりたい」


「『一葉より馬鹿は』これ以上ない侮辱だぞ。最近のAIは自動名誉毀損装置が付いてるから謝罪しといた方がいいぞ」


「ふぎゃあああぁぁぁ! ごめんなさいAIさん!」


「もう。何とか言ってやってよ、陽斗。あれ? 陽斗、どうしたの?」


 イチハの天然ボケに、何時もなら一番に猛ツッコミを入れる陽斗なのだが、今日はずっと黙っている。

 俺の〈透明人間〉にも一人無反応だったし、明らかに変だ。


「何か有ったのか?」


「あっ、うん。最後まで黙ってようかと悩んでたんだけど……もう、言っとくよ。実はさっき、田舎から連絡が有ってな。ずっと入院してたバアちゃんが死んだって言う悲報だったんだ」


「えっ? マジで?」


「マジなんだよ。何か急に悪化して、親父も死に目に会えなかったんだ」


「あんた、何でそんな大事なこと最初に言わないのよ。怪談会に参加してる場合じゃないでしょ」


「楽しい空気を壊したら悪いと思ってな。最後に言うつもりだったんだ」


 陽斗はお祖母さんの葬儀の準備の為、両親と共に明日朝一で田舎に向かうらしい。

 陽斗の田舎は富山県の山奥らしく、車でも結構な時間が掛かるそうだ。


「わりぃ。そんな理由で俺、明日から数日リモート抜けるわ。こっち帰って来たら又続けるからよろしくな」


「無理しなくて良いよ。理由が理由なんだし」


「いや、俺、バアちゃん好きだったからな。気を紛らわす為にも、皆と騒ぎたいんだよ。親父にもそう言ってあるし。たぶん三、四日で帰って来るから、頼むよ」


「……分かったよ」


「さあ、湿っぽいのは嫌だし、明るくパアーと残りの怪談話を続けようぜ!」


「怪談会なんだから湿っぽくて良いんだけどね。じゃあ、山並君のお祖母さんに贈るレクイエムの意味も込めて、僕が最恐の怪談を発表するよ」


 正直、陽斗の親族の死に対し、皆ショックを受けていただろう。

 けど、誰よりも明るいムードを好む陽斗の為にも、怪談会はそのまま盛り上がりを見せながら続けられた……。





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