【AI怪談 十六話目〈宅配〉 緋黒】
ぐっすり寝ていたのにドンドンとドアを叩く音で起こされた。
ドアの外からは「宅配でーす」という男の声がしたので、俺は「今あけまーす」と返事してからベッドから抜け出し、部屋の明かりを点けた。
時計を見たら午前二時なので、こんな時間に誰からの荷物だろうと寝ぼけ頭で考えてたのだが、ドアを開けようとした瞬間に気づいた。
夜中の二時に宅配なんておかしい。
頼んでもないのに宅配がこんな時間に来るわけがない。
俺は慌ててドアから離れた。
外からは「宅配でーす」「宅配でーす」と何度も連呼。
ドンドンとドアを叩く音と、ガチャガチャとノブを回す音が繰り返される。
俺は怖く成り、同じコーポに住む管理人さんに電話した。
事情を説明すると、管理人さんは直ぐに警備会社に連絡するから十分ほど待っててほしいと言った。
待っている間も「宅配でーす」という声と、ドンドン叩く音は鳴り止まなかった。
十分位経つと一旦音が鳴り止んだ。
警備員が来たんだと安堵した瞬間、今度は「警備員でーす」と言う声とドンドンとドアを叩く音が続いた。
俺はゾッとした。
何故なら「宅配でーす」と言っていた声と、「警備員でーす」と言ってる声は、全く一緒だったからだ。
俺はもう一度管理人さんに電話した。
すると管理人さん自身が直ぐ見に行きますと言った。
間もなく「管理人でーす」という声が外から聞こえた。
だが、それは明らかに管理人さんの声ではなかった。
宅配男の声が、今度は「管理人でーす」を繰り返し、ドアを叩く音を更に高めていく。
俺はパニックに成り、警察に電話しようとしたが、同じ事の繰り返しに成るだろうと思い留まる。
そして、話だけでも聞いてもらおうと、遅い時間だが彼女に電話してみた。
ツーコールと待たずに電話に出た相手は、「彼女でーす」と名乗った。
宅配男の声で……。
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