一日目 リモート怪談中 其の四

「何よ期待させといて。緋黒の怪談、全然大した事ないじゃない。うちの叔母さんから聞いた実話に比べたら完全な子供騙しだわ」


「みんなの怪談とは臨場感とか完成度が違っただろ。だいたい君の叔母さんの話も実話じゃなく、作り話じゃないのか?」


「はあ? 何が臨場感よ。最後の裕香の怪談の方が、よっぽど臨場感有って怖かったわよ。ねぇ、裕香……あれ? どうしたの? 暗い顔して?」


「えっ? あっ……な、何でもない……」


 確かに裕香の顔色が、最後の怪談中に急に悪く成った。

 暗やみの中でもそれが分かったぐらいだ。

 自分の怪談がよっぽど怖かったのだろうか。


「大丈夫? 気分悪く成った」


「ううん。本当に大丈夫よ。ありがとう、飾くん」


「お、お化けに取り憑かれたとかじゃないよね?」


「違うわよ、イチハ。それなら希梨々ちゃんが気づくでしょ」


「そうよ。これでもちゃんと霊感あるんだから。安心して。今日は誰の所にも悪い霊は近寄らなかったわよ」


「ふん。本当かな?」


「何よ!」


「まあまあ。それより皆、今日作った怪談は削除したかな? 一応削除するのがルールだからね」


「はーい」


 通常、百物語の場合は百本のロウソクを灯し、一話終わるごとに一本づつ火を消すらしい。

 けど参加者の中には、家にロウソクが無い者も居るし、第一夜中にロウソクを灯すなんて危険だ。

 親に見られたら煙草吸ってるって勘違いされるかも知れない。

 だからロウソクではなく、AIで作ってもらった怪談を、発表したら直ぐに削除するというルールに変更した。

 残していても仕方ないからね。


「あっ! もうこんな時間」


「そろそろお開きね。では幹事長の飾くん、どうぞ」


「えーそれでは皆さん。これにて第一回、元三年一組によるリモート怪談会の一日目を終わらせていただきます。明日も必ず深夜零時から一時までにご参加下さい。でないとあなたの元に、こわーいお化けが現れますよ。てなわけで、お前らとっとと寝ろ!」


「おう!」


 時刻は現在零時五十九分。

 皆がモニターから順々に消えて行き、一日目の怪談会は何事もなく終了した。

 賛否は有ったが皆の元気な顔が見れて俺は満足だ。


 パソコンの電源を切り、手元に置いていたスマホを充電器に繋ぐ。

 俺はベッドに入ると直ぐに布団を被り、深い眠りへと落ちていく。

 その日の夢は、皆と楽しく雑談を続けるという内容だった……。



 一日目は本当に何事もなかった。

 正確にはリモート怪談会参加者のこの九人には何事もなかった。

 でも、この日の怪談終了後、俺達の知らない所で、既には始まっていた……。


 百話目まで、残り九十一話……。

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