【AI怪談 ニ話目〈老婆〉 未彩】

ずっと寝たきりだった老婆は、突然奇声をあげた。


付き添いの看護師は予期せぬ事態に驚く。


「コッチに来る」「コッチに来る」と、老婆は何度も叫んだ。


「何が来るの?」と看護師が呼び掛けても、老婆は「コッチに来る」としか言わない。


担当医が駆けつけても、それは変わらなかった。


鎮静剤を打っても奇声は治まらず、どんなに押さえつけても暴れ出す。

やがて老婆の顔や腕には内出血が起こりだしたのか、幾何学模様のまるで迷路のような痣が広がっていった。


そんな症状は今まで無かっただけに、医師も看護師もお手上げ状態に成った。


時間が過ぎ、夜が始まろうとした時、老婆はやっと叫びを止める。


そして今度は「アッチに行く」「アッチに行く」とゆっくり静かに呟きだす。


やがて老婆の声は、心臓の音と重なり、ほとんど聞こえなくなる


その頃には身体中にできていたはずの奇妙な痣は綺麗に消えていて、医師も看護師もこれには不思議に思うしかなかった。


「アッチに行く」


「アッチに行く」


「アッチに行く」

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