第2話
これが異世界転移なのかと理解すると同時、
3人のうちの大柄な1人がモデルガンを構える俺に襲い掛かる
『死ねやぁ!』
「ちょ!?うわぁ!?」
俺はすんでの所でその剣を躱し、転がりながら木の陰に隠れる
『ゴラァ、逃げてんじゃねぇぞ!』
『おい、あっちから回り込め』
『んじゃあっしは逆側から追い込みまさぁ』
足元の悪い森の中だと言うのに身軽に動くチンピラ達に終始ビビりながらも、俺はいよいよ覚悟を決めた
「と、止まれ!さもなければ撃つぞ!……本気だぞ?マスクもメガネもしてなければ痛いぞ?ほ、本当だぞ?そっちがその気ならお、俺だって……」
『何ゴチャゴチャ抜かしてやがる!死ねぇ!』
「うわぁ!?」
相手を制止するために啖呵切ったは良いけど、相手には俺が持つ物が何か理解出来てない様子だし、何より言葉が通じない
仕方が無いと思った俺は、ローリング回避で剣の軌道から逸れ、少しの距離を取ってから瞬時に相手を向き相棒の45口径を構える
「わ、悪く思わないでくれよ?」
パァン
「………」
『………』
『………』
突如森に鳴り響く銃声に驚いたのか、俺も含めた全員の動きが止まる
いや、俺だけは銃声だけに驚いた訳じゃない
少しの間を置いてチンピラの1人がグラリと揺れ地に伏せる
「………」
『アニキ!?』
『野郎!やりやがったな!?』
俺は無言でチンピラ共から反対を向き、全速力でその場から離脱した
『待てやコラァ!?』
『逃さんぞ!必ず落とし前付けてやるからな!』
チンピラ共が何を言っているのかも分からないし分かりたくもなかった
俺は只々、ひたすらに足を動かし、結果的にその場から逃げる事に成功した
只、逃げる道中で頭の中を駆け巡るのは何故発砲音がしたのか?何故相手の頭から血が噴き出たのか?何故………俺のモデルガンが“本物”になっているのか?だった………
深い森の中、辺りを見渡せど緑、緑、緑
今の自分が何故この状況に至るのかを考え、そして自分が、おそらくは…殺してしまったであろう相手を思い出し、再びその場で何度目か分からない嘔吐を繰り返す…
「……何なんだよこれは……」
再び自問の世界へと入り込むが、その問いに応える者は何処にもいない
そしてその問いを自分が考えた所で答えなんて出るはずも無い
「……ふー…………………」
大きな木の陰にもたれ掛かり、思い出したかのように腰の水筒をゴクゴクと勢いよく飲み、残りを頭からぶっ掛ける…
(少しは落ち着いた?)
(…………まぁ、多少はな…)
頭に直接響くような“声”に、俺は自分がいよいよおかしくなったのかと危惧するが、その声は存外……いや、かなりの美声……と言うよりも俺が好きな女性声優さんの声そのものだった
その声につられるように俯いていた顔を上げるが、当然その場には誰もいない。
(やはり辛い環境が生んでしまった幻聴か……)
いきなり訳も分からない環境に放り出され、不可抗力とは言え一つの命を奪ってしまった自分に耐えきれなくなった俺自身が生み出してしまった声に、俺は思わず自傷気味に笑う
だけど、幻聴とは言え好きな声優さんの声が聞こえた事は、不幸中の幸いとは違うかもしれないが、心を少し落ち着けるきっかけとしては良かったのかも知れない
(言っとくけど幻聴なんかじゃないんだからね?)
可愛い声が頭に響くが、やはり辺りを見渡しても声の主は見えない
(もー!しょうがないなぁ。少しだけだからね?)
そんな声が聞こえた瞬間だった
再び俯きそうになっていた俺の視界に突如現れた美少女
「え?……あ?……」
声にならない声を上げる俺を少し心配そうに下から見つめたその子は、こんな森の中にはとても似つかわしくないフリフリのドレスにヒラヒラのスカート
スラリと伸びた足には膝下くらいまでのやや長いブーツを履き頭は金髪のツインテール
簡単な表現方法としては魔法少女?が的確だろうか?
そしてそれらの情報を一蹴してしまうのが、その女の子が手の平サイズだと言うことだろう
声もそうだが、顔もかなり可愛いらしく、宙にフヨフヨと浮かんでいるのだが背中に羽のような物は見当たらない
これだけでもかなりの情報量なのだが、あと2つ属性を足すとするならば、ロリと巨乳。だろうか?
いや、手の平サイズの女の子なのだからロリとは少し違うかも知れないが………
「ジャジャーン!“時”の妖精ビビィちゃん参上!だよ!」
……………………
「あれあれー?反応薄くなーい?おーい、見えてるー?」
………………………
「もっしもーし。目合ってるよね?大丈夫?声聞こえてる?」
………あぁ、そうか。これは“夢”なのだと強く認識した時、俺の意識がスッと遠ざかっていくのを感じた
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