サバゲー好きな俺異世界転移したけど敵認定されたので自力で帰還を目指す

ロコロコキック

第1話

俺は名前は青山大樹。28歳普通のサラリーマンだ。

田舎から出てきて一人暮らしを極めた俺は当然のように童貞で、あと一歩で魔法使いに手が届くと言った所


いや、俺が童貞なのは一人暮らしかどうかは関係なく、単純に俺が外に出るタイプでは無いからだろう。もちろん彼女なんて存在は居たことはない。

休日を趣味のゲームに没頭する俺は、そこそこの給金を貰い、そこそこの家賃の家に住み、そこそこの仕事量が与えられる職場を、そこそこの熱量でこなしていく人生を、そこそこの幸福度を持ちながら、そこそこ生きていくのだろう

特に不満は無いが、凄く満足している訳でもない。

そんな日々を送っていた折だった

何気無しに見たスマホのニュースに“今!サバゲーが熱い!”の文字

そもそもがミリタリー系のガンシューティングゲームが好きだった事もあったのだろう。半ば衝動的にすぐさま一式を揃えた俺は、次の休みにはサバゲー会場に足を運んでいた

そこそこの貯蓄があった故の衝動だろう


普段体を特に動かす事も無かった一般サラリーマンの俺だったが、サバゲーと言うものにハマりにハマった俺は、サバゲーの為に体を鍛え始めたりもした

そこそこの貯蓄のお陰で最初からそこそこの重武装で参加していた俺だったが、サバゲー歴も1年が経った頃、いつしかその武装は軽量化、小型化していき、いかに相手に見つからず、ステルスプレイが出来るか。


と言ったスタイルへと移り変わっていった

それには、あの憧れのキャラの憧れのスタイルだったからと言うのもあったのだろう

俺の青春ど真ん中だった原初の蛇の物語は、それからの俺を支え、そして今の俺をも大きく支えてくれている

戦闘服も原初の蛇に合わせ、バックパックも似たものを装備し、繋がっていない右胸の無線機と、トレーニングナイフも左胸に装備してある

もちろん相棒の45口径のグリップは既に削り済みだ

そして腰にはもう1丁、エアコキタイプのハンドガンも装備してある

あくまでサバゲーのモデルガンなのだから、それがどんな武器であれ威力に差なんてそれほどないのだろうが、これらのロマンは分かる人だけが分かってくれたらそれでいいと思っている

要は楽しんだ者勝ちなのだ


そんな俺は今日も早朝から車を走らせサバゲー会場へと向かう

会場に着くと早朝にも関わらず、既にそこそこの人数の参加者達が戦闘準備を始めていた


「よー、アオダイさん。久しぶりだねぇ、今日はよろしく頼むよ」

「おはようございますジンさん。こちらこそ今日はよろしくお願いします」


既に1年は趣味として続けてる手前、そこそこのコミュ力のある俺は、そこそこの顔見知り程度ならそこそこの人数は出来ている

目の前に立つガタイの良いオジさんのジンさんもその1人だ


「アオダイ……?あれが噂の……?」

「あんまり強そうには見えないよな?」

「コスチュームはまんまじゃねえかよ」


「まぁ、そこそこ良いコスチュームしてるよな」

「あぁ、あの45口径もそこそこ良い物に見えるぜ」

「全くだ。あのキャラは憧れがあっても、そこそこ違うもんになるのが相場だってのに、奴はそこそこ着こなしてるように見える」


「だが顔が似合ってないな」

「あぁ、戦闘服はそこそこなのに顔がダメだ」

「残念な顔だ。悪くはないが似合ってない」


これらの陰口も、そこそこの聴力を持った俺には普通に聞こえてしまう

少し前から言われ出した“似合ってない”

イケメンでは無いが、ブサイクといった訳でも無い……筈の俺が原因なのは所謂フツメンたる所以だろうか

けれど、それらの陰口に少しばかりの嫉妬心が混じっている事も理解出来る俺は、少しばかり得意気な気持ちになるのも事実


なにせ、蛇スタイルは俺に圧倒的に合っていたから

そのあまりの強さに、一度悪ふざけで会場中が俺の敵になった事もあったが、そんな時でさえ俺は逃げ切る事が出来てしまったくらいには才能があった


加えてトレーニングの成果か、一般サラリーマンの肉体をそこそこ凌駕するくらいには身体にも自信があったから尚の事だろう




さてそろそろ頃合いかと思った瞬間だった

足元から強烈な光が立ち昇った

「!?閃光弾?誰だよ、サバゲーでそれは禁止……」

咄嗟に目を瞑りながらも文句を言っていた俺だったが、次に目を開けた瞬間には俺の頭は理解の範疇を超えていた

「一体どこの誰が……………………………………………………………………ここは何処?」


先程まで見えていたジンさんも他のプレイヤー達の姿も消え、視界の端に見えていた受付のテントすら見えなくなり、変わりに俺の視界に飛び込んできたのは辺り一面全てが緑に覆われた森の中だった


「はっ?……えっ?……」

意味が分からない俺だったが、キョロキョロと辺りを見渡していると、草陰が大きく揺れ、そこから3人の武装した人達が歩いて来た


『お前か?“秘宝”を盗もうとしたバカは?』

『変な装備に特徴的な服装。アニキ、間違いありやせん、こいつが犯人でさぁ』

『さっさとぶっ殺して褒美を貰おう。こんな弱そうな奴殺して金貨10枚たぁ俺達ぁツイてるぜ』


「!?ちょ、ちょっと待ってください!犯人てなんですか犯人て?それにぶっ殺すだなんて物騒な。演出が凝りすぎですよ。言葉も何処の物か知りませんけどちょっとやり過ぎですって」


俺は一瞬で理解した。これは所謂“ドッキリ”なのだと

何故俺なんかに仕掛けたのかは分からないけど、大方ジンさん辺りからのサプライズって所だろうか?

それにしては演出が凝りすぎだけど、そこまでしてくれる嬉しさなんてのも多少はある

しかし言語が分からない言葉を喋っている筈なのに理解出来てしまうなんてどんなトリックなんだろうか?


一応、サプライズに便乗してあげようと銃口を相手に向けて構えてみるが、何やら嫌な予感が先程から俺に突き刺さる


『あぁ?何言ってんだ、こいつ?訳わかんねえ言葉喋りやがって』

『へへへ、おそらくは喋る事の出来ねぇように“魔法”が掛けられてるんですぜ』

『はっ!そんな小せえ物構えて何してやがる?もう良いからさっさと殺っちまおうぜ?』


これは所謂“アレ”なのだろうか?

いや、今でもドッキリでしたーって線は捨てきれないでいる

しかし万が一あれが“本物”だったのなら?

3人がそれぞれ抜いたのはパッと見では本物なのか偽物なのかが分からない“剣”


日本刀のそれとは違う、所謂西洋剣のそれに、俺はかなり本気でビビってしまった

まだ本物かどうかは分からない……分からないがあの“人達”は“本物”だ……素人の俺ですら分かる、今から殺されるかもと錯覚してしまう程に俺に突き刺さるこれは、所謂“殺気”と呼ばれる物なのだろうか


そして腰が引けながらも俺は半ば衝動的に理解した。あぁ、これが所謂“異世界転移”なのだと

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