Azure Part 3 反撃
俺は真っ黒な空間にいた。
すぐにピンときた。世界を渡るときに通る空間なのだと。普通は白い空間だが、なんで真っ黒なんだ?
ゆらりと空間がゆらぎ、真っ白な髪の女が現れた。
「ごきげんよう、
「おう! ごきげんよう」
「あなた弟が、異世界で迫害を受けています」
「フリオが? あいつはどこに行っても虐められてるよな。で、おまえはだれだ?」
「うふふ。もうお分かりでしょう? 私は神と対を成す存在です」
「つまり、悪魔ってわけか」
「はい」
「悪魔が俺に何の用だ?」
「冷酷で無慈悲な神々と違って、私たちは情け深いのです。神々の寵愛を受けた者はみな見目麗しい者ばかり、神は見目麗しい者に、二物も三物も与えるのです。醜い者には徹底的に無関心なのです。なんという残酷な世界。美しい者だけを寵愛する神々に反旗を翻した者、それが私です」
「御託はいい、俺に何をさせたい?」
「神々は弱肉強食を是としますが、私たちは弱者の味方です。弱者がいかにして強者を打ち倒すか、それこそ生の醍醐味だとは思いませんか」
* * *
魔法王国テラビジアの人々は皆慌てふためいていた。
「黒い悪魔の集団が王都を目指しているだと?」
テラビジアの王様は伝令の言葉に耳を疑った。
「結界を張っておけば防げるのでは?」
と宰相は言ったが、魔術師団長は首を振った。
「結界はザルのようなものです。魔力の少ない者や黒い悪魔のような小さな生物の侵入を防ぐことはできません」
「見つけ次第、即刻駆除しろ。徹底的にだ!」
王様は怒鳴りつけるように命令した。
「魔王討伐前に、王都が黒い悪魔まみれになるなど、シャレにならん!」
王都の上空に突如巨大な飛行物体が現れた。映画に登場するような巨大な宇宙船を思わせる、上半分が白、下半分が黒い円盤が、王都に大きな影を落とした。
「こんな巨大な物体の侵入を許すなど、魔術師たちは何をしておったのだ!」
テラビジアの王様が怒鳴り散らす中、ひとりの少年の声が王都中に響き渡った。
『僕の名前は五木フリオ』
王都中に散らばったGたちがあますところなく伝達して増幅し、少年の声を届けていた。
『魔法王国テラビジアの人々へ。
Gの
雌伏の時は終わりを告げた。我らはこれより王都へ侵攻する。
王族、貴族、平民、女、子供、老人、誰であろうと容赦するつもりはない。
お前たちが我々にしたことを、今度は我々がお前たち返す番だ。
心して聞け。これは我々Gの生存を賭けた戦いである!』
加瀬耕一を筆頭とする勇者たちは驚愕した。
「五木が生きていただと?」
「下級クラス民のぶんざいで、忌々しい!」
「ゴキブリ階級と言われるだけあってしぶといですね」
「今度こそ完全に息の根を止めてやる!」
「みんな! 全力で五木を叩き潰すぞ!」
「おおおおーーーーっ!!!!」
アニーフェが
「勇者様、魔王討伐が近づいています。力は温存して頂いたほうが…」
「そんなこと言ってたら、王都が黒い悪魔に乗っ取られてしまうぞ! それでもいいのか!」
「そんなのはいやですー!」
アニーフェは目に涙をためて加瀬耕一にしがみついた。
* * *
テラビジアへの宣戦布告を終えたフリオは、隣にいる人物に話しかけた。
「兄さん、こんなもんでよかった?」
「ああ、上出来だ!」
フリオと幻洋は、ともに円盤の上から王都を見下ろしていた。
円盤はフリオとソラの子供たちが擬態した姿であり、特殊能力を使って浮かんでいた。
「兄さんが来てくれて本当に助かったよ。僕たちには逃げることしかできなかったから」
「フリオはまだまだ甘いからな。Gは二億年という人間よりはるかに長い時を生きてきたんだぜ。二十万年ぽっちの人間と生存競争をすれば、どっちが勝つかなんて明白なんだよ」
幻洋は王都の空を見上げた。
サファイアのような鮮やかな青空がどこまでも広がっていた。
「それに、こんな楽しいことをひとりじめなんて絶対にさせねえからな!」
【名前】
【職業】黒い悪魔
【能力】G´´
【称号】フリオの兄
異世界より舞い降りし少年
人の生より解き放たれ
千億の同胞を引き連れ
テラビジアの天空を覆う
【第一章 おわり】
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