レクチャー


 僕は今白い空間にいる。

 異世界に渡るときに必ず通るあの白い空間だ。

 そこで僕たち二年B組は女神様からレクチャーを受けていた。


 が。


 僕の担当の女神様はただいま読書中だ。

 女神様の前に座っているメガネっ子は、女神様にレクチャーを受けるでもなく、同じく読書中だ。


 小一時間ふたりはそのまま読書を続けていた。

 僕の後ろにはお喋りに興じている深窓の令嬢レイと灰色ネズミが控えていた。


「あのー、そろそろ異世界レクチャー始めてくれませんかねー」


 僕が声をかけると、読書を邪魔されたせいか、女神様はすごく不機嫌になって眉をしかめた。

 メガネっ子も同じように眉をしかめて僕をにらんだ。

 こいつら双子かよ。


 女神様がボソボソとメガネっ子にレクチャーをして、異世界に渡っていった。


 やれやれ、ようやく僕の番だぜ。まったく。


「あなたは異世界に行って、Gになります」


 夜空を思わせる色あいの長い髪、長いまつげに神秘的な黒い瞳の女神様は、満面の笑みを浮かべてそう告げたのだった。


「は?」


 どうやら僕は女神様の不興を買ってしまったらしい。


「そんな理不尽な」


「あら、世界が理不尽じゃなかったことなんて一度でもあったかしら?」


 女神様はタブレット上のエンターキーをポチッとした。


「では、いってらっしゃいませ」


 そして、僕は異世界に渡ってGになった。


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