3.幻洋 VS 二年B組の愉快な仲間たち


「いくわよ、ルカちゃん!」

「オーケー、リリちゃん!」


【名前】白間シルマ莉々リリ

【職業】魔術師

【能力】絶対防御

【称号】二年B組の委員長


【名前】音里瑠夏ネリルカ

【職業】錬金術師

【能力】生成

【称号】二年B組の副委員長


「二年B組の安寧は私たちが守る!」

 彼女たちは色違いのお揃いローブを着て古代闘技場の舞台に上がってきた。

「このローブは、白い空間で女神様からもらった特別製なんだからね!」

 なにげに優遇されてるよね、勇者たち。


「フリオ、次は俺にやらせろ」

 幻洋がベンチから出て来て言った。

「いいけど。あんまりやりすぎないでね、兄さん」

「おう! わかってるって!」

 フリオと幻洋はタッチをして交代した。


「さーて、ガキども。お仕置きの時間だ!」

「Gごときが何を粋がっているのかしら?」

「いけ! G!」

 幻洋が手をかざすと、弾丸のようにGが飛び出した。


「絶対防壁!」

 Gは全て莉々の絶対防御にはじかれた。絶対防御を突破することは何人たりとも不可能だ。

「防御は私におまかせ! ルカちゃんは思いっきりやっちゃって!」

「うん、まずは腹ごしらえ」

 音里は団子を取り出して食べ始めた。

「ほら、五木のお兄さんも食べなさいよ」

「おっ、ちょうど小腹がすいてたんだ」

 さては桃太郎よろしく団子で懐柔するつもりだな。その手にはのらねえぜ。団子はもらうけどな。

 もぐもぐ。団子んま…。


 うっ。


 幻洋は胸を押さえて蹲った。


「ひっかかったわね。ホウ酸入りの団子のお味はいかがかしら?」

「くそっ。だましやがったな」

 フリオのクラスメートたちのあきれた声が聞こえてきた。

「なんの疑問も持たずに食べちゃうんだ」

「さすが五木のお兄さんだな」


「ほらほら五木のお兄さん、まだまだあるよ!」

 音里がころがした団子にGがわさわさと群がった。

「お、おまえら、食うな!」

 幻洋の命令を無視してホウ酸団子を食ったGたちは儚く散っていった。

「はあはあ…くそっ」さすがに幻洋も瀕死状態だ。


「Gは魔法の耐性は得られるけど、毒の耐性はどうかしらね? うふふふふ」

「私の腹心はヤバイやつだったのね」と白間。

「お褒めの言葉として受け取っておくわ。錬金術は魔法のようで魔法にあらず、よ。そして極めつけは」

 音里は粉のようなものをバラまいた。

「即死毒!」


「がはっ」

 バタンキュー。


「仕上げはこれで」

 音里はさらに粉を撒いて火を放った。

「吹き飛べ!」

 盛大な爆発が起こり、闘技場のGが一掃された。


 クラスメートから賞賛の声が上がった。

「粉塵爆発か、すごい威力だな」

「さすが委員長の腹心だ」

「あこがれちゃうわ」


 ベンチで一部始終を見ていたフリオはあんぐりと口を開けたままだ。

「幻洋兄さん、冗談だろ? マジでやられたのかよ?」


 ぶ~~ん。

 実態を見せずに忍び寄る黒い影。

「やれやれ死ぬかと思ったぜ」


「なんで生きているんだ、五木のお兄さん?」

「しぶとすぎよ」

「あいつらほんとうに人間やめちゃったんだな」


 Gの駆除は一筋縄ではいかない。白間莉々は覚悟を決めた。

「こうなったら最終解決手段よ、ルカちゃん」

「オーケー、リリちゃん。この方法だけ使いたくなかったけど、自業自得ね」

「何が自業自得なのか、さっぱりわからん」

 緊張感のかけらもない幻洋の様子を、フリオはハラハラしながら見ていた。

「兄さん、大丈夫か?」


「麻薬生成!」

「なっ!」

「防御はまかせて!」

「快楽の園に旅立て! 麻薬シャブ漬けの廃人になりなさい!」


 幻洋もさすがに焦った。

(俺のGセンサーが危険だと知らせている! 麻薬漬けになったGなんて想像を絶するぜ。絶対防御があるから、Gはあいつらのところに届かない。どうすれば…)


 そのとき、幻洋の目にあるモノが飛び込んできた。

 ふふふ…。運は俺に味方をしているようだな。


「音里とか言ったな、おまえのポーチ、大事な物でも入ってるのか?」

「それがなにか?」

「大切そうに持ち歩いてるみてえだからさ。ちょっとした老婆心からなんだが、中を検めたほうがいいんじゃね?」

「無駄よ、時間稼ぎなんて」


 音里はちらっとポーチを見た。

 すこし開いた口から、黒い触覚のようなものがのぞいていた。

「あっ!」

 音里はあわててポーチを投げ捨てた。

 ポーチの口が大きく開き「ゴキゲンヨウ」とGが顔を出した。

「いやああああああっ!!」


「ここで一句。異世界で Gのあいさつ ゴキゲンヨウ」


「五木のお兄さん、最低だな!」

 フリオのクラスメートたちが冷たい視線を幻洋に向けた。

 

「まてまてまて、全部俺のせいにするな。そのGは地球産まれだぞ」

「つまり、世界を渡ったGなのか?」

「謎は全て解けた! Gは最初からポーチの中に入っていたんだ!」

「そのとおり!」


「お気に入りだったのに…ぐすっ」

「泣かないで、ルカちゃん。ちょっと五木のお兄さん、謝んなさいよ!」

「なんでだよ。てか、G一匹くらいで、メンタル弱すぎだろ」

「なんですって!」

 ブーブー。


 音里が泣いて、白間ににらまれて、幻洋たちの戦いはグダグダのまま終わった。


「まあ、いっか。さーてと、次の対戦相手はどいつだ?」



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(※ 幻洋 VS 二年B組の愉快な仲間たちパート2)


【名前】古都ノ葉ニナ

【職業】魔術師

【能力】誤変換魔法

【称号】ダジャレ大好きっ子


 彼女は誤変換魔法を用いてGを爺に変換した。

 幻洋はヨボヨボの爺さんになって、枯れ葉のように散っていった。

「やったか!」

 喜んだクラスメートたちは言ってはいけないセリフを口にしてしまった。

 フラグは立った!

 輪廻は巡る。散っていく命もあれば、生まれくる命もある。

 幻洋はピチピチのGになって復活した。


【名前】柊木ともり

【職業】魔術師

【能力】声魔法

【称号】某声優のそっくりさん


 彼女は声魔法の使い手で、地球の某声優さんそっくりの声で幻洋を罵った。

「豚さん、いえ、五木のお兄さん、消えてください!」

「あんた、ばか?」

「Gなのはいけないと思います」

 幻洋には全く効果がなかった。


【名前】森脇知子

【職業】聖女

【能力】聖魔法

【称号】二年B組の聖母


 森脇が闘技場の中央まで歩いてきた。

 歩みを進めるたびに制服越しにたゆんたゆんとゆれる大きなオッパイが、幻洋の視線をくぎ付けにした。

 森脇は両腕で胸を隠した。

「どこ見てんのよ!」

「はぇ」

「ひとの胸、チラチラチラチラ見やがって、気持ち悪りぃんだよ!

 毎日毎日、穢れた視線を浴せられるこっちの身にもなれってんだ!  変態野郎!

 なにが二年B組の聖母だ、あたしゃテメエらの母親か!

 Gだろうがなんだろうが関係ねえ。浄化してやんよ!

 セイント・ピュリフィケーション!」

 白い光の柱が立ち昇り、幻洋を包んだ。

「うおおおおおっ!」


 光の柱が消えたとき、そこにいたのは、古代闘技場の中心で両腕を突き上げて叫ぶ幻洋だった。

「耐えきったどーーっ!」


「どういうことだよ、フリオ?」

 トモローがフリオのところにやってきてたずねた。

「兄さんの中の黒い悪魔の99.99%は浄化されて消滅したんだ」

 と、フリオは解説した。

「しかし、0.01%が耐性を獲得して生き延びたんだよ」

 なんという生命力、なんという適応能力!

 そして、幻洋にはもう浄化魔法は通用しない…。


【名前】五木幻洋

【職業】黒い悪魔

【能力】G´´

【称号】フリオの兄、聖なるG (←NEW)

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