2.フリオ VS 上級クラス民


 古代闘技場の真ん中で178センチメートルの加瀬耕一と140センチメートルの僕が対峙した。


 加瀬耕一 VS 五木フリオ


 闘技場の電光掲示板には二人の名前と簡易ステータスが映し出された。


「見せてもらいましょうかね、覚醒した勇者の能力とやらを」

「後悔しても手遅れだぞ。僕がこの剣を抜いたとき、全ての命の灯は消える」

 加瀬耕一は腰に差した剣をゆっくりと抜いた。

「出でよ、光の剣ライトブレイバー!」

 刀身がまばゆい光を放った。

「ビームサーベルじゃん!」

「魔王をも消滅させるという光の剣。ライトブレイバーによって与えられた傷は、どんな治癒魔法も受け付けない」

「へえっ」

「またの名を、殲滅の剣」

「物騒な名前だなー」


「加瀬、Gは好きか?」

「嫌いだよ。生理的にな。ガサゴソという音を聞いただけで虫唾が走る」

「たいへん結構、くらえ!」

 僕はGを加瀬に向かって投げた。


 ザン!


 Gは両断され、消滅した。


「くそっ! 僕のGが…」


 さすが勇者というべきか、付け入るスキがない。


「三倍加速」加瀬は赤い彗星のような速さで迫ってきた。

「おちろーーっ!」

「うわあああああっ!」

 ザシュッ!

 僕の全身は真っ二つに切り裂かれ、光とともに消滅した。

「ふう、ライトブレイバーの最初の獲物がクラスメートだとは、下級クラス民とはいえ気分が悪いな」


「加瀬くん、あなたは悪くないわ、気に病まないで」

「そうよ、五木のは自業自得よ」

「下級クラス民なんていくら死んだってかまわないわ」

「ありがとう、君たちが僕の翼だよ。君たちがいればどこまでも飛んでいけそうな気がする」


 ブーーーーン。

 実態を見せずに忍び寄る黒い影。


「黄泉蛙、黄泉蛙、黄泉ガエル、G~」

 僕は歌を口ずさみながら、もといた場所に復活した。

 この世にGが存在する限り、僕は無限に再生できるのだ。


「なっ! そんなバカな! ライトブレイバーは魔王さえ倒すことができるのに!」

「残念でした」

「それならもう一度!」

「効かないよ」

「なにィ!」

「僕はもう光魔法の耐性を獲得したからね」

「くそっ」


「なら、次は僕が相手をしよう」

 そう言って、闘技場に上がってきたのは加瀬耕一の相棒、菅原たかしだ。

 菅原は加瀬とツートップを張る二年B組の貴公子だ。


「耕一が光なら僕は影。僕の能力は闇魔法だ!」


  電光掲示板に菅原のステータスが表示された。


【名前】菅原たかし

【職業】勇者

【能力】闇魔法(SSS)

【称号】二年B組の貴公子



「五木、キミは存在自体が不愉快だ」

「なんでだよ」

「生理的に許せないんだよ、キミが! 愚鈍でいつもコソコソと逃げ回っている君たち下級クラス民はゴキブリ以下の存在だよ」

「はいはい、そうですか」

「出でよ、ブラックホール!」

「マジ!?」

「因果の地平に消えろ、五木ィーーッ!」

「うわあああああっ!」


 僕の身体はブラックホールに飲み込まれ、跡形もなく消滅した。


「掃討完了」

「さスガだ菅原。スガスガだな」

「スガスガはやめてくれよ、耕一」

 加瀬と菅原はグータッチをした。

「すてきーーっ!」

 二年B組の女子たちが盛り上がったのは言うまでもない。


 ブーーーーン。

 実態を見せずに忍び寄る黒い影。ふたたび。 


 僕はスタッと闘技場の真ん中に降り立った。


「闇魔法の耐性ゲットだぜ!」

「ぐぬぬ…」

「さあ、次はだれが相手かな?」


「サイテー! このド変態のゲスクラス民が!」

 クラスの女子からブーイングが飛んできた。


 以前の僕だったら傷ついていただろうけど、今の僕にはソラがいるからね。

 痛くも痒くもないよ。


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