【固有技能】日常依頼を達成しながら次こそ魔物生を生き延びてみせる!

第10話 粘着生物αはダンジョンを進むよ、どこまでも

 とりあえず、今日の分の日常依頼デイリークエストは達成済みなのですることもなくなったが、できる限りはこの洞窟内を進んでみようと思う。

 そういえばこの洞窟は前世の記憶だとダンジョンというらしく、魔物関連の記憶に含まれていた。


 正直、ダンジョンについてそこまで知識は無かったが洞窟ではないことが分かったので良しとしようと思う。

 現在地は行き止まりの部屋なので一旦、道を戻って他の分岐路を進む。そして、角兎…もといホーンラビットを倒しながら、技能を試した。


 残念ながら、魔物の死体はダンジョンの地面に吸収されてしまう為、吸収Ⅰは試すことができなかった。


 現在のステータス表示は以下のようになっている。


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【格】8/10

【種族】粘着生物α

【技能】吸収Ⅰ 溶解液Ⅰ 体当たりⅠ

【固有技能】日常依頼デイリークエスト


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 格は8まで上昇している。後、2上昇すれば上限まで到達するのでより上位の種族に進化できる。

 正直、ホーンラビットではそろそろ上昇しにくくなってきたので先程見つけた下に降りる階段を降りる。


 しばらく、散策を続けると地面からカチッと音が鳴り、頭上を槍の束が突き抜ける。

 ダンジョンが想定していた身長ではなかったお陰か罠に掛からず素通りできた。


 しかし、この階層からは魔物だけでなく、罠も仕掛けられているようだ。無闇に進むことができなくなりそうだが気にせず進もう。


 そこから、罠を乗り越えては魔物と戦ってを繰り返してダンジョンを進んだ。ちなみにこの階層の魔物はケイブバットで、見た目は大きなコウモリで頭上から襲いかかってくるので溶解液Ⅰをぶっかけて倒した。


 そういえば、あるケイブバットが黒色の石…記憶では魔石を落とすだけでなく、牙も落としてくれたので吸収Ⅰを試すことができた。結果は、多少の強化が起きただけで他には特に何もなかった。

 量が足りないのか、技能の格が低いのかは分からないが、とりあえず今後も魔物が何か落としたら試してみよう。


 次の階段が見える前にいたケイブバットを倒したら、リング状の光を経験して格が上限まで到達した…が特に変化はない。

 ステータスを表示して確認をする。


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【格】10/10

【種族】粘着生物α

【技能】吸収Ⅰ 溶解液Ⅰ 体当たりⅠ

【固有技能】日常依頼デイリークエスト


【進化選択】粘着生物α通常強化型

      粘着生物α物理特化型

      粘着生物α魔法特化型


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 ステータスには進化先を選択できる項目が追加されていた。どうやら、この中から選ぶことによって進化が完了するようだ。


 選択肢として粘着生物αは変わらずにあるが通常強化型、物理特化型、魔法特化型の内どれかを選べるらしい。

 どのようになるかが分からないということが不安感を増加させるが、とりあえず今の所何かしらに特化する必要も感じないので通常強化型を選んでみようと思う。


 …と、思ったがそもそもどうやって進化先を選べば良いのだろうか?このつるんつるんとしたボディで表示されているステータスに体当たりすれば良いのか?それとも意思決定を脳内で行えば良いのか?


 悩んだ結果、「技能や固有技能を使用する時と同じように、その選択肢の名称を意識すれば進化できるのでは…?」と思いつき、その通りに行動すると進化が始まった。


 正解を引いた喜びを感じていたと同時に急激な全身の痛みとボゴボゴッという音が響きわたる。全身の痛みと違和感に耐えながら、少しするとようやく治った。


 閉じていた目(ないけど感覚ね?)を開くと共に視線が高くなったことに気づく。

 進化前より肉体が2〜3倍のサイズになっており、色合いも前回が薄い青色だったのが、より濃くなった。

 力や速さなども比較するとより強くなった感覚を覚える。格の上昇よりも大幅な強化が施された感じだ。


 早速とばかりにステータスを表示する。


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【格】1/30

【種族】粘着生物α通常強化型

【技能】吸収Ⅱ 溶解液Ⅱ 体当たりⅡ

    再生Ⅰ 保管庫Ⅰ 状態異常耐性Ⅰ

【固有技能】日常依頼デイリークエスト


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 進化によって格は1からやり直しで上限が30になった。また、所有していた技能はⅠからⅡになり、新規の技能は再生Ⅰと保管庫Ⅰ、状態異常耐性Ⅰを獲得していた。


 再生Ⅰと状態異常耐性Ⅰはよく物語で出てくるスライムが持っていそうなものと同じような技能であり、保管庫Ⅰは所謂、異世界で必需品なアイテムボックスだろう。


 とりあえず保管庫Ⅰを試してみると、目の前の空間に穴が空いた。穴の中を覗くと縦と横、高さがそれぞれ50cmの空間があった。

 進化前に倒したケイブバットが落とした魔石を体当たりで飛ばして空間内に無理矢理、入れてみるとそのまま入った。


 そして、保管庫Ⅰの使用をやめ、もう一度使用する。目の前の空間にまた穴が空いたので中を覗くとケイブバットの魔石がそのまま入っていた。

 保管庫Ⅰの使用をやめて、もう一度使用しても保管庫Ⅰの中身は消えないと理解して、安心する。


 …そして、気づいたがどうやって中身を取り出そう。先程、入れるのですら体当たりで無理矢理中に入れた感じなのに…。


 この保管庫Ⅰは今の所、使い道がないな。


 保管庫Ⅰの使用をやめて、階段をさっさと降りる。次の階層の魔物は出会った瞬間から猪突猛進してきた。そう、猪さんである。


《プギャァア!》


 前世の記憶によるとノーマルボアらしい。進化前ならノーマル仲間だね。今は粘着生物α通常強化型、通称がスライムなんだ。

 残念ながらノーマルは外れてしまったから容赦する必要ないので、溶解液Ⅱを前方向に飛ばしてすぐに右側に避ける。


 ノーマルボアは溶解液Ⅱをまともにくらい頭が半分程溶けてしまった。とてもグロいが既に何回もこの光景は見ているので慣れてしまった。


 進化したてで格が低いからか、ノーマルボア一体で格の上昇の合図であるリング状の光を経験する。


 ノーマルボアの溶け具合から、溶解液Ⅱは溶解液Ⅰよりも威力が高まっていることが分かる。前回までなら溶解液Ⅰを何度か使用する必要があったが今回は一撃で倒せた。


 これは期待値が低かった吸収ⅠもⅡになったことで期待できるのでは?と思いながら、ノーマルボアが落としたであろう小さな毛皮に吸収Ⅱを使用すると、前回よりも強化幅が上昇していた。

 技能などが手に入ればいいなと思っていたが技能獲得は確率が低いのだろう。今は強化幅が上昇しただけでも良しとしよう。


 そして、ノーマルボアの階層では倒しては進み、倒しては進む。偶に前回、鑑定紙が入っていた箱…通称、宝箱を2回見つけた。


 中身はノーマルボアの牙と錆びた銀剣で、両方とも吸収Ⅱを使用し、強化する。今回もハズレだった。技能とか手に入らないかな。


 また、階段を見つけたので下に降りる。次の階層には…鼠の魔物がいた。前世の記憶によるとスーアラットという魔物とのこと。

 スーアラットは主に下水道などに生息し、基本的に感染症を持っている為嫌われている魔物の一つだ。


 正直、戦いたくない。気乗りしないがとりあえず、溶解液Ⅱを使用するがスーアラットは素早く逃げ回り、接近を許してしまった。


《シャアッ!!!》


 驚き、一瞬思考停止しかけたがすぐに気を持ち直して接近しているスーアラットに体当たりをかまし、距離をとらせる。


《シャッ…!!!》


 体当たりによって怯んでいる内に溶解液Ⅱを乱射して、似非全体攻撃を行うとスーアラットは避けきれずに頭から背中が溶解液Ⅱで溶けた。

 魔石だけを落とし、他には何も落とさなかったがそれでいい。正直、バイ菌に吸収Ⅱを使用したくないからだ。まぁ、流石に落としたら渋々だが吸収Ⅱを使用する。少しでも強くなれるならしておくのが一番良い。


 スーアラットは同じ戦略で対応し、階層内を進む。格も何回も上昇して少しずつだがスーアラットの速さにも対応出来始めたので溶解液Ⅱを乱射せず、一発で処理できるようにはなった。


 この階層で宝箱は1回だけ見つけた。中身は毒々しい緑色の液体が入った瓶であり、実際に毒だった。

 何故、分かったか?それは吸収Ⅱを使用して初めて技能を獲得したからだよ。


 ステータスを表示して技能の項目を見る。


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【格】11/30

【種族】粘着生物α通常強化型

【技能】吸収Ⅱ 溶解液Ⅱ 体当たりⅡ

    再生Ⅰ 保管庫Ⅰ 状態異常耐性Ⅰ

    弱毒液Ⅰ

【固有技能】日常依頼デイリークエスト


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 そう、弱毒液Ⅰを獲得した。この弱毒液Ⅰは溶解液Ⅱと同じように弱毒性の液体を体外に作り出して操作することができるという技能だ。正直、溶解液Ⅱの方が強い。なので、使い方を工夫する。


 まず、弱毒液Ⅰを使用して、更にその周りに溶解液Ⅱを使用する。これによって溶解液Ⅱでコーティングされた弱毒液Ⅰができる。


 これは始めに溶解液Ⅱで敵の表面を溶かして体内を剥き出しにさせる。次に剥き出しにした表面に弱毒液Ⅰをかけ、体内に弱毒液Ⅰが侵入しやすくさせる。

 これによって溶解液Ⅱで倒せない敵もジワジワと体力を削り、こちらに有利な状況にすることができる…はず。


 今後、使うか分からないがとりあえずこんな感じに工夫すれば少しは使えるだろう。


 下に降りる階段も見つけたのでさっさとこの階層ともおさらばする。まだまだ余裕があるので後しばらくは階層に留まったりはしない予定だ。


 ゴブリン、ホーンラビット、ケイブバット、ノーマルボア、スーアラットときて、次はなんだろうかと思いながら、階層内を探す。


 どうやら次は…森のー熊さーんではなく、腕が4本の熊であるマルチアームベアさんだった…地味に強そう(小並感)。


 早速、お手並み拝見とばかりに溶解液Ⅱを頭に狙いを定めて使用する。こちらの攻撃に気づいたマルチアームベアは4本あるの腕の内、2本を犠牲にして溶解液Ⅱを防いだ。


 これじゃあ、普通の熊さんだね。と内心で思いながら次の溶解液Ⅱを2つ用意して時間差をつけて放つ。


 接近して攻撃しようとしていたマルチアームベアはもう一度残った2本の腕を犠牲にして溶解液Ⅱを防いだが油断して時間差で頭に向かって飛んできた溶解液Ⅱを浴びてしまい、頭を失った肉体が後ろに音を立てて倒れた。


 格の上昇の合図であるリング状の光を経験しつつ、マルチアームベアの落とした魔石を体内に吸収する。


 毎度思うが…何故か魔石は体内に吸収して力が増すことができるが吸収Ⅱの対象とはならない為、魔物の力を獲得できない。魔物の力、ようは技能などを獲得するにはその魔物の落とした魔石以外の物が必要になる。


 これに関して、魔物は魔石を摂取することで肉体が強化されるという特性を本来持っていることが原因だと考えられる。魔物という全体的にできることとスライムという種族が持つ吸収という技能の違いなんだろう。


 そのことについてはもう気にせずにマルチアームベアの階層を進み、千切っては投げを繰り返す。

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