第9話 背面攻撃は流石に痛いで済まないわ!

 アミルタと濃厚な夜を過ごした俺は目の下に軽く隈を作りながら、アーバン行きの馬車に揺られる。横にいるアミルタも俺と同じく眠そうだ。


 後何日も馬車の中で暇を持て余すしかないかと思うと現代は娯楽に溢れていて恵まれていたんだと気づく。正直、することがないのでアミルタの膝に頭を預けてそのまま寝る。


 勿論、アミルタには一言断ってから膝枕してもらっている。流石に一晩夜を共にすれば少しは情が湧くし、命令しずらい。なので、これは命令ではなく、お願いという形だ。


 幸いアミルタは了承してくれた。ついでにそのまま寝るようだ。足が痺れそうだがその時は起こして貰う予定だ。


 ふと、目が覚めると外は日が暮れる所だった。アミルタは目を閉じながら下を向いていたが胸で軽く隠れていて少ししか見えない。


 まだ少し眠かったのでもう一眠りするつもりだ。最悪、馬車の御者が起こしてくれると思うので目を瞑り、意識を落としていく。


 目を覚ますと周りは闇だった。それと理由は分からないが地面を向いている。いつの間にかに寝返りをうって、アミルタの膝上から落ちてしまったのだろうか?


「…???」


 …何故か背中が痛い上に熱い事に気づく。なんだろうと思いながら体を動かそうとするが何故か体に力が入らない。


「カハッ!」


 喉に何かが溜まっているようなのでそれを吐き出す。すると、口の中に血の後味が広がったので血が喉に溜まってたことを理解した。


 そして、懐かしい感覚が蘇ってくる。これはそう…死の感覚だ。体は温かいのに芯から少しずつ冷めていくような感覚。そして意識が段々と薄くなっていく感覚。怖い、恐い、コワイ…恐怖心が出てくるが、加えて諦心も湧き上がってくる感覚。


 何故、急にこんなことになっているのかが分からない。目を凝らして原因を探る。


 すると、アミルタが首都サンデルで適当に購入しておいた鉄剣…つまり、アミルタを脅していた時に使用していた鉄剣を持って、側で立っていた。そして、アミルタの持つその鉄剣には血が滴っていた。


 すぐにアミルタが犯した事実に気がつき、怒りが沸き立つ。


「…ア、アミルタぁ!貴様ぁ…」


「ふふ、主様が悪いのですよ?無警戒で私に命を預けてしまうのですから…ずっと隙を探していたことに気づかないとは、なんて愚かなのでしょうか」


 どうやら、アミルタは発動していた聖魔法『信徒化』の出力が弱まった隙を狙って俺の背中を鉄剣で刺したようだ。


 出力が弱まったということは前日試験的に発動した聖魔法『信徒化』は失敗していたということなのだろう。


 背面攻撃は流石に痛いで済まないわ!そう思いつつ、刺された位置が心臓を逸れていることを確認した。


 それでも既にかなりの量の血を流してしまっているので助かりはしないだろう。現に目が霞み始めた。普通の人は死んでる量だが、まだ生きているのはレベルの恩恵だろう。


 なんか、このまま死ぬのは確定っぽいので嫌がらせに周辺を巻き込んでやろう。


「…ッァ!ミ、ルタぁ…」


 もう喋るのさえ上手くできなくなってきたので急ごうと思い、魔法を脳内で構築する。

 今回、最後の魔法は全魔力と生命力を使用するつもりだ。人生最後にして最大の、最高の魔法を目指す。

 勿論、雷魔法と聖魔法の二重魔法を発動する予定だ。


 生命力をほんのちょっぴり残して、全魔力と生命力を雷属性と聖属性に変換する。

 そして、2つの属性に変換した魔力を編み込む。形は俺自身を中心に円形に広がっていくようにし、効果は威力向上、破壊力増加、生命崩壊など様々な効果をできる限り、時間の許す限り詰め込む。


 最後にトリガーとなるキーワードは…。


「全員、死にさ、らせ!…ッぺ!」


 気合いを入れて、最後まで言葉を紡ぐ。喉に詰まった血を吐き出して、声を出す。


「…二重魔法『神罰』ゥゥウ!!!」


「な!まだ、ていこ…」


 アミルタが何か言いかけたがその瞬間にはもう世界は俺を中心に純白に染まり、徐々に周囲を呑み込みんでいった。


 半径50m程まで純白の世界は広がり続けてその後には人も木も地面も…更には空間すらも【無】になっていた。


 復讐、いや嫌がらせをした本人すらも巻き込んで一帯を削った二重魔法『神罰』はショーンの人生で最後で最大で最高の威力となった。


 ショーンが生命力をほんのちょっぴり残したのはなんやかんやあって、最終的には自分も生き残るだろうと思っての行動だったが、自分自身を中心にした結果、最初に死んだのはショーンとなった。


 こうして、またもや自死した阿呆は転生を開始した。次はもう少し長生きして欲しいと思われながら…もう、ホントなんで死ぬの?




 目が覚めるとそこは暗い洞窟の中だった。自分自身が何者かも分からず、只々本能に従って行動した。


 まずは適当に周囲を散策する。少し動くと醜い姿をした緑色の人型に出会った。


《ゲッッッギャァァア!!!》


 こちらを確認した瞬間に襲ってきた為、反射的に腕を動かそうとする。しかし、腕はなく体が動くだけだった。


「…!?」


 どうやら、自分は円形上の生物で腕や足などはないようだ。仕方なく体当たりを緑人(仮名称)にする


《ゲギャ!…ゲ、ゲギャァ》


 緑人はこちらの体当たりによって吹き飛んで洞窟の壁に衝突し、後頭部の打ち所が悪かったのかその後動くことはなかった。


 すると、自身の足元(足ないけれど)からリング状の光が現れ、天に向かって登っていく。その光が体全体を超えた時に全身に力が漲ってきた。緑人を倒す前よりも強くなったようだ。


 ぼーっとしていると、壁付近に倒れていた緑人は地面に吸収されるように消えていき、小さめの黒色の石が地面から吐き出された。


 本能に導かれるまま、その黒色の石を吸収する。やり方は石の上に乗ると体の中に石が自動で取り込まれる感じだった。


 体がブルリと震え、美味しいという感覚が湧き上がる。その後、力が多少増した。どうやらこの石は食べても大丈夫な物のようだ。


 ひと段落したので周囲の散策を再開した。その後も緑人とは何度か戦闘になったがその度に体当たりで倒し、死体が地面に吸収後に吐き出された黒色の石を吸収する。

 リング状の光は一度だけ経験したが、そう何度も起こる現象ではないようだ。


 散策を続けると下に降りる階段を発見し、そのまま降りる。次の階も同じく暗い洞窟だった。変化がないと感じながら動くと出会ったのは緑人ではなく、角の生えた兎だった。


 とりあえず、緑人のように体当たりで倒そうとする。しかし、角兎(仮名称)はこちらの行動よりも速く突進を繰り出してきた。


《キュウッ!…キュッゥゥウ》


 その速さに驚き、サッと避ける。すると、角兎は背後にあった大きめの石に衝突した。ピクピクと足を痙攣させ、気絶しているようだったので体当たりで首をへし折る。


 緑人と同じように角兎の死体が地面に吸収され、黒色の石が吐き出される。変化は特にないようだが、角兎の石は緑人よりも多少、大きく見えた。とりあえず、石は吸収して先を進む。


 角兎を何匹も倒しつつ、先を目指す。途中で角兎の討伐によって2回程リング状の光を経験した。そして、階段を降りてから何度目かの分かれ道を進むと行き止まりだった。

 行き止まりは来た道よりも広く、その真ん中には箱が一つ置いてあった。


 気になったので体当たりで無理矢理に箱を開けると、中には一切れの紙が置いてあり、触れた瞬間に紙は燃え尽き、灰の中から光が現れて飛び込んできた。


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【格】5/10

【種族】粘着生物α

【技能】吸収Ⅰ 溶解液Ⅰ 体当たりⅠ

【固有技能】日常依頼デイリークエスト


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 知らない文字が頭の中に表示され、何故かその文字の内容が理解できる。


 文字の内容を理解すると同時に多少の知識も流れ込んできた。どうやらこの紙は鑑定紙と言い、接触することによって効果が現れる魔道具のようだ。ちなみに、一度のみの使い切りタイプであり、使用すると先程のように燃え尽きて灰になる。


 鑑定紙を使用すると今後好きな時に脳内にステータスを表示することができるようになるようだ。


 ステータスによると自分は粘着生物αという種族のようだ。


 流れ込んできた多少の知識によると別名がノーマルスライムで見た目が丸々とした円形であり、よく伸びる。また、体の中身は酸性の液体で満たされており、液体の中には臓器などはないが代わりに一つだけ核がある。

 この核は潰されると死ぬらしいので気をつけよう。


 流れ込んできた多少の知識は他にもあり、格は生物を倒すと経験値を獲得して、一定値に達することで上昇することや上限まで到達することで進化し、より上位の種族になることができるというものがあった。後、リング状の光は格が上昇した合図であり、肉体をより強化するらしい。


 技能はその者が使える能力のようなものであり、例えば吸収Ⅰは生物の死体や鑑定紙のような魔道具といったある一定の力を所有する物を吸収することでその力を少し獲得できるという技能だ。また、溶解液Ⅰは体の中身を満たしている酸性の液体と同じものを体外に作り出して操作することができるという技能であり、体当たりⅠは体当たりする時に威力が加算される技能とのこと。

 そして、常時発動型と任意発動型に分かれているようで常時発動型は常に発動しているもので任意発動型は意識して発動する必要があるものだ。


 最後に固有技能は同じものを持っている者は存在せず、技能に似ているが技能よりも強力かつ特殊なものが多いらしい。そして、固有技能は獲得する確率がとても低いようだ。


 日常依頼デイリークエストは毎日依頼が与えられ、それをこなすことによって報酬が付与されるらしい。

 実際に試してみないとどういったものかは実感できないので試してみようと思う。


 技能や固有技能の使い方はとても簡単で、その名称を意識して使おうとすれば使用できるらしい。


 早速、日常依頼デイリークエストを意識して使用する。


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日常依頼デイリークエスト


【依頼内容】魔物の討伐10/10

【依頼報酬】記憶の一部

      経験値


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 ステータスを表示した時と同じように文字が頭の中で表示され、それと同時に…前世の記憶の一部分が蘇ってきた。


 …と言っても、緑人はゴブリン、角兎はホーンラビットなどというような魔物関連の知識が分かるようになった程度だが。


 とりあえず、これはこれで便利なので今後もできる限りは日常依頼デイリークエストは達成するようにしようと思う。


 後、日常依頼デイリークエストのもう一つの依頼報酬で経験値が付与されたのかリング状の光を経験し、格が一つ上昇した。

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