第3話 来ちゃった♡
「来ちゃった♡」
「えっ、誰?」
照星が昨日スマホで検索していたダンジョンへ向かう為、部屋で装備を整えていた時にそれはやってきた。
照星の眼前に金髪でグラサン、そして「我、神なり」と印字された白いTシャツを着たいかにも怪しい男性が現れた。
「僕は…神だよ」
「…一昨日きやがれ」
「おぅふ」
そう、男性?(第2話参照)である。照星は反射的に答えてしまったが開口一番に自分は神だと言われたら仕方ない…はず。
照星は元々が無信仰なので神という存在は信じていなかった故にこの自称神への印象は最悪である。
「ひっどいなぁ…」
「馴れ馴れしくして欲しくないんだけど?」
「それもそっか…ハハ」
自称神は虚しく笑い、照星はそれを呆れた眼差しで見つめる。
「まぁ、それは信じてくれなくても良いんだけどさ…今日は僕がここに来たのは君のスキル:
「…ッ!何故、小生のスキルを知っている」
照星は驚きながらも装備していた爺ちゃんの刀に手をかけながら自称神を警戒する。
「だから、僕は神だってば!そんなの神なんだから知っててもおかしくないでしょ?」
「俺、神、信じない」
「そんな片言で僕を否定されても…もう、今は僕が神かどうかは置いといて!」
「置いとくんだぁ…」
「君が僕を信じないからでしょ!?」
「さっさと進めて欲しいんだけど?」
「もうやだ!この人間ってば」
辛辣な照星に振り回される自称神は手の平を額につけて目眩がするかのようなポーズをとる。照星は警戒を少し緩めながら、「なんだろこの残念な奴は…」と内心で思った。
「はぁ…君のスキル:永毒ね。僕が面白半分で設定したんだけど修正したいんだ。問答無用で修正しても良いんだけど流石にこれは僕の過失だし、一応話しをしようと思って今日は来たんだ」
「面白半分って…」
「あー勿論、修正するからにはその分の補償も考えているんだけど…良いかな?」
「むむむ…」
照星は永毒が下方修正されると感じとり、かなり悩んだ。確かに永毒はかなりやり過ぎなスキルだとは分かる。だが、こんなチートスキルを補償で手放して良いのかと思った。
「ちなみに、補償内容はどんなもの?」
照星はとりあえず補償内容だけ聞いてみるかと考え、自称神の動向を気にする。
「んーっとね…補償としては転移魔法(制限あり)と次元保管庫、レベル上限解放、最後に隠蔽かな」
「かなり太っ腹だな」
「それだけ君のスキルを修正するなら必要な補償ということだよ。このまま君を放置しているとダンジョンに誰も入って来れなくなってしまうからね。それだけは避けたいしさ」
「ふーん?」
「それでね…補償内容をもっと詳しく言うのなら、転移魔法は全ダンジョンの入り口付近までMP消費なしで移動できて、次元保管庫は所謂アイテムボックスだね。時間停止と容量無制限で生物以外ならなんでも保管できる感じだよ。レベル上限解放は条件を無視して、レベルの一次上限である99の壁を解放して、200にするものだね。隠蔽は鑑定を弾くものだよ。君、称号とかヤバめだから必要かと思ったんだぁー」
「なるほどね…実際に小生の永毒を修正するとなるとどんな感じにするんだ?」
「こんな感じだね」
照星が自称神に聞くと、自称神はステータスに似た青いプレートを出現させ、こちらに見えるように移動させる。
ーーー
スキル:
永毒の状態異常を引き起こす霧を噴出する。
状態異常:永毒は解毒不能、HP上限を削る毒。
ーーー
これが…
ーーー
スキル:
永毒を武器に付与する。
永毒を付与された武器で対象にダメージを与えると永毒の状態異常を対象に引き起こす。
状態異常:永毒は解毒不能、HPを削る毒。
ーーー
…になった。修正されると霧状だったものが武器に付与される形になるらしい。それとさりげなくHP上限を削る毒だったのにHPを削る毒になっている。
「下方修正になってしまうんだけど、まぁ許してね。僕は神だからそれぐらい…ね?」
「えー…グッ!!!」
照星が文句を言おうとした瞬間、自称神より放たれた重く苦しい威圧を受けて体が言うことを聞かずに地面に転がった。
息を忘れたかのように呼吸が上手くできず、心臓が締め付けられるように拍動が早まる。
「良いよね…?」
「グッ…い、い」
「良かったぁ〜!これで安心。じゃ、もう君のスキル:永毒は修正しといたから僕は帰るよ。またねー!」
「はぁ…はぁ…ぐぅ」
言わされた感が酷いが照星が許可すると、自称神からの威圧がスッとなくなり、すぐに体が楽になった。
自称神は照星が地面に転がった時にでも修正していたのかステータスに似たプレートを消し、照星の部屋から一瞬でいなくなった。
「結局、強制じゃんか。まぁ、小生に説明とかなしの問答無用でやられるよりはマシだけどさ…」
その後、照星は部屋の地面で回復するまで横になり、いつの間にかそのまま寝落ちしてしまった。
「ふぁ〜!…ん?あぁーそういえば、小生は昨日そのまま寝落ちしたんかぁ〜。床で寝てたから体痛ぇぇ…ゴキゴキ」
次の日の朝、日が窓から差し込むと照星は寝ていた部屋の床から起き上がり、凝り固まった体をほぐすように背伸びをした。
「ぁぁ…喉乾燥してるわぁ。うがいしてお茶でも飲もっかぁ〜な」
照星は立ち上がり、水道に向かってうがいをし、冷蔵庫からお茶を取り出して大量に飲んだ。余程、喉が乾いていたのか用意していたお茶を全て飲んでしまった。
「そういえば、昨日のアレ本当に補償くれたのか確認してねぇわぁー」
ステータスと心の中で呟き、照星はステータスを確認する。
ーーー
小鳥遊 照星(20)
レベル:77
職業:毒魔導士
HP:470/470
MP:3850/3850
スキル:
称号:虐殺者、狂人、毒マスター、殺人者、神との遭遇者、レベル一次上限解放者
ーーー
「ふむふむ…補償はしっかりと貰えているなぁ…うん???なんかレベル上がっている上にスキルが増えてね?」
照星はレベルが上がっており、更には威圧耐性もスキルに追加されていた。
原因としてはアレな神と遭遇した上に威圧を受けたことが攻撃判定に入り、圧倒的格上である神との戦闘で生き残ったということで経験値が入ったのだろう。威圧耐性に関しては神の威圧という経験を得たことでスキルとして獲得したのだろうと考えられる。
「まぁ、貰うものは貰ったしこれでよしとしようかな。それより小生ダンジョン行こうとしてたのに予定狂ったなぁ。今日の所は念の為に休んどこっと」
照星はその後、ダンジョンに行く為に用意していた装備を外して部屋着に着替え、楽な格好でスマホを見てその日一日を過ごした。
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