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 街の代表との話し合いの場を設ける事になり、取り敢えず3日の休息が全隊へ通達され、私も夜遅くまで鎧をみがいていたのでぐっすりと寝ていた。

 でも、何故だか分からないけど次の日には私とオーキンドラフ様の部隊は王国騎士団の騎馬隊に編成されて、ゼーレンガルク国の手助けをするために敵の補給線を襲うようにと命じられた。

 後で聞いたところによると左翼指揮官に歩兵と一緒に並べても足並みが合わず、勝手な事ばかりするので本隊で使ってくれないかと打診があったらしい。

 確かに敵陣を通り抜けてその辺を勝手に走り回っている兵士など使いにくいか…と、反省はしたもののエランコード国の地理なんて知らないのでとても困っている。

 オーキンドラフ様も高速で移動し続ける私達の補給役の部隊に指名されていたけど、危険度は高く敵部隊に見つかれば命はない任務に尻込みをしていた。

 案内役であるエランコード国出身者と兵力を与えられ、敵に見つからないように街道を移動していく。

 戦いのあったヘムヤット辺境伯領から南東にある王都と、エランコード国とゼーレンガルク国との国境がある南方を繋ぐ街道で、馬車を襲っては移動する。

 発覚を遅らせるために全滅が基本で、輜重しちょう部隊では無い商人も山賊の仕業に見せるために対象となった。


 気が滅入る仕事ではあるけど、今回はちゃんとした輜重しちょう部隊の馬車で国旗を掲げ、兵士達が護衛をしている。

 手旗で合図を送り、逃げられないように挟み込んで馬車に襲い掛かる。

 今回の標的は馬車5台に50人以上の兵隊が付いていて、これを逃さないように出来るだけ早く全滅させるのが今の仕事というわけだ。

 トカゲ達に乗った10人の紫鎧と1人の銀鎧が車列の片側から襲いかかり、兵士達の注意をきつける。

 紫鎧こいつらは魔物だと思われるから鎧をみがけと言ったのに、何を気に入ったのか自分達を不死身のデュラハン部隊などと言いだし、逆に全身を紫で染めだした護衛達バカどもだ。

 すでに周辺は囲んでいるので、私達が逃げられないように考える必要は無く、魔力持ちもろくにいない輜重しちょう部隊なら私達だけで苦も無く倒せるのだけど、その後の馬車をどうするかが問題だ。

 オーキンドラフ様の部隊に任せて本隊まで輸送できるのが1番だけど、街道の都合で輸送ができない事が多いので、もったいないけど持てる分以外は袋や樽を破壊して捨てていくしか無い。

 それでも部隊人数分の影の部屋と馬を使ってそれなりに運ぶことは出来るけど、オーキンドラフ様達と合流するのは数日に1度なので大部分は捨てることになった。

 最近は輜重しちょう部隊の護衛の人数も増え初め、なかなか襲う相手も見つからなくなって来たので1度本隊に戻るか、人数を増やしてもっと規模の大きい相手を襲うかという話をしている。

 あまり規模の大きい部隊を倒すと、その分討伐部隊の規模も大きくなるので、あまりやりすぎるとこっちが危なくなるんだよね。

 ちょっと前にも300人を超える討伐部隊が街を出たって聞いて慌てて逃げ出したくらいだ。

 伝え聞く所によるとナミルタニア本隊は追加の部隊と合流し、侯爵領を落とした後エランコード国の王都手前にある公爵領で交戦中。

 ゼーレンガルク国は国境の砦を落とす事に成功し、王都までの道筋で一番大きな城塞都市がある侯爵領で交戦中らしいのだが、エランコード国の同盟国が出てきて足踏みしている状態らしい。

 同盟国から食料支援などがあるから、私達の破壊工作は少し効果が薄いかも知れない。


「よし、最後に少し大き目のを襲ったら本隊に帰ろうか。」


「そうですな、商人達も見かけなくなりましたし、輜重しちょう部隊の規模も我々では手に負えなくなってきましたから潮時でしょう。

 それでどのくらいのに手を出します?100程度の部隊もあまり見かけなくなりましたが。」


「逃げられても良いわけだし200くらいなら行けると思うんだよね。騎士団の人達も逃げる相手ばかりだったから暴れたいでしょう?」


 さっき襲った部隊も、荷物を持って行った部隊があれば、帰る部隊もいるわけで。ほとんど空荷の部隊だった。

 たまに壊れた武器や、怪我人を乗せていたりするし、食糧を積んでいる量も少ないから襲う必要性も少ないけど、敵兵を減らせるからと戻りの部隊を襲ったのだ。


 結局200よりちょっと多い部隊と、途中で見かけた商人を襲い物資と馬を手に入れて本隊へと合流した。

 本陣での報告の時に敵兵が増え過ぎたので、騎兵を倍くれるように頼んだら断られて城塞都市攻略戦に参加する事になった。

 また投石機を見ているだけなので暇ではあるけど、山賊の真似をして商人を襲うよりは気分は楽だった。

 商人の財布の中身を確認していると、本当に山賊に落ちた気分になって来たからね。

 戦争なのだから殺し合いは仕方ないとしても、兵士同士でやり合ったほうが百倍マシだった。

 たとえ外壁が壊れず、門の破壊に2日もかけているにもかかわらず全く壊れず。兵士達がダレていて破城槌はじょうついを使っている部隊以外仕事が無くても、こちらの方が私はよかった。

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