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 メンケント砦での会議に参加し、エランコード国の砦であるエラメニア砦攻略戦の作戦を聞いた。

 例によって発言権は無く、決まった事を聞くだけの会議だ。立案しろと言われても困るから良いけどね、徹夜で作戦を考えてたのか目の下のくまがすごい人が何人もいるし。

 今回、こちらの2面作戦のせいで十分な兵士の人数を集められなかったエランコード国側は籠城ろうじょうを選んだらしい。それも町を利用した市街地戦をしようとしているのか町のあちこちに何かを運んでいる様子が見られるそうだ。

 こちらとしては危険な市街地戦に付き合う必要はないので、投石機で門までの道を作り、城壁を崩して一気に制圧する作戦だけどゆっくりしていれば周辺国がどう出るか分からないので出来るだけ急ぐ、という事らしい。

 攻城兵器はたくさん持って来たので私達の仕事は砦を囲んでいればいいようだけど、当然敵も攻城兵器を破壊しに来るはずなので戦闘にはなるはずだ。


 会議が終わって陣地に戻り、陣形を保ったまま半日かけてエラメニア砦の近くまで移動したら、夕食を食べて交代で眠りにつく。

 翌日は早朝から投石機を組み立てていたというのに敵が出てくる様子は無く、飛ばされた石と火のついた木片によって次々と民家が破壊されていった。

 木材と布や皮で作られた家ばかりのようで、投石に耐えた家々も次々に火が燃え移り砦の外壁を隠すかのように煙で先が見えなくなった。

 当たり前だけど町に残っている町民は居ないようで阿鼻叫喚あびきょうかんなんてことにはなっていない。

 メンケント砦が奪還された時点で仕事の無くなった商人達はとっとと他の街へ稼ぎに行き、難民も食っていけないのでこの数年でこの町はすっかりもぬけの殻になってしまったそうな。

 そんなわけで遠慮なく破壊しまくっているわけだけど、隠れている敵兵にはたまったものではないようで動く姿が散見さんけんされる。

 敵の大型兵器は射程が足りない様で、距離を測るためか数発撃たれたもののその後の追撃はない。あの大きな矢が刺さっている所までは安全などとは思っていないけどもうしばらくはこのままの状態が続きそうだ。

 今は砦の7割ほどを囲み、2つある門のうち1つを塞がずに空けている。砦なんかを包囲する時の定石らしく、空けておくと中から敵兵が出てきて数を減らしやすくなるんだそうだ。

 その分標的になる左翼と右翼は危険になるんだけど、正面から攻めるよりは被害が少なくすむんだとか。

 ということで今まさに門から出てきてこちらに向かっている騎兵の部隊をなんとかしようと思う。


「オーキンドラフ様、それではちょっと行って来ます。」


「ああ、気をつけるのだぞ。通しても構わんから戦いの勘を取り戻すために軽く戦う程度にしておけ。」


「分かりました!」


 ユミル領の魔力持ちの中から選抜された10名の精鋭と11鱗鎧トカゲアミットを引き連れて陣を離れる。

 魔力の濃縮法を教えて身体強化をみがき、全身鎧を身につけた精鋭兵で。アミットのつがいに良さそうな鱗鎧トカゲアーマーリザードを見つけることが出来たので、子を育てて増やすことが出来た。

 それによって生まれた11人の重装騎兵が私が戦争で好きに動き回る条件としてオーキンドラフ様に言われて育てた部隊だ。チタンを集めるために磁力魔法も教えて、ゴードンさんに弟子けん嫁の魔力持ちを送り込んでなんとか作ってもらったので、結構な金額がかかっている。

 馬の方が脚は早いので避けられないように間合いを計り、投石機目掛けて突撃してくる騎兵の正面に飛び込み、敵を殴りながら奥へと進んでいく。

 高速で移動している時は体から離すと魔力が置いて行かれるため、馬での移動中に特大火球を撃つことは難しい。

 どうしても減速する必要があるため、本命の魔法を撃つ兵士は奥に隠されているものだ。魔力の気配を探り、ミスリルの刃で集められている魔力ごと敵兵を切り裂くと、減速すること無く騎兵の間を通り過ぎる。

 敵の間を抜け終えて、ちらりと後ろを振り返ればこちらの兵士に脱落者はおらず、敵の兵士が地面に転がっていた。

 正面には第2陣だろうかさらに騎兵の部隊がやってくるのが見え、こちらに槍を構えて向かって来ていた。


「減速し土球準備!構え!」


 部隊に命令を出し11人と11匹で土球を作って構え、射程に入ったところで発射する。


「撃て!突撃開始!」


 敵の出鼻をくじいた後、再び前進を開始したところで突然、横から何かにぶつかられて吹き飛ばされた。

 かすかに風切音が聞こえたが横には敵兵どころか人すら居なかったはずで、この草原には隠れるような場所も無い。

 しばらく転がった後、治療を行いながら急いで立ち上がると、驚いた顔をした敵兵の顔が見えた。


「突撃を続けろ!動きを止めるな!」


 足を止めかけていた味方に激を飛ばし、とどめを刺しに私に向かって来た敵兵を逆に斬り倒す。

 乗り手の居なくなったまま突撃して行ったアミットが途中で折り返して迎えに来てくれ、隙を見て飛び乗って敵の間を走り抜ける。

 アミットは馬に踏まれても何とも無いからと急旋回してこっちに戻って来てくれたんだけど。目の前で突然進路を変えて割り込まれた馬達はアミットの体に足を引っ掛けて盛大に転ばされていた。

 味方と合流して混乱している頭を落ち着けるために、砦から離れて自陣へと進路を向ける。


「何があったか見てた人はいる?いきなりふっ飛ばされて意味が分からないんだけど?」


 合流した兵士達に聞き込みを行なって事態の確認をする。


「右手側から細長い木のような物が飛んできて、ユミル様が吹き飛んでいくのが見えました。」


「落ちていた物を見ましたがどうやら大型弩弓バリスタの矢の様でしたね。」


投槍ジャベリンよりも太かったですよ。なんで生きてるんです?」


 右肩辺りに当たって背中へ抜けていった感触はあったからかすっただけ何だと思うけど、昔祖父達が冗談で言っていた事を実践する事になるとは思わなかったな。


「偶然かも知れないけどあの距離を狙って当ててくる奴がいるなんて…砦との距離は気をつけないといけないね。あと止まるのも減速も危ない。」


「狙って当たるものじゃないとか聞いてましたけど、当たる時はやっぱ当たるもんですねぇ。」


 その後自陣に戻って鎧の損傷を確認してもらうと、かすった傷がついているだけだと分かり自分の頑丈さを改めて知ることになった。

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