081
子爵夫婦に惜しまれつつもロックドップ領からヒェロナ村まで戻って来て、村に残していたチャスラと再会した。
ヒェロナ周辺で樹木の育成ができるように、原因を取り除いておいて欲しいと頼んでおいたのだけど、話し合いのために借りた村長の家で結果を聞いたら、チャスラが体内から小さな鉱石を大量に吐き出した。
銀色に輝く鉱石は込められた魔力によって淡く光っているように見える。
「まさかミスリルか?植物の成長に影響を与えるなど聞いたことがないが。
いや、それよりもミスリルの鉱脈が領内に存在しているのか!?チャスラよどうなのだ!埋蔵量は多いのか!?」
前のめりになってチャスラに手を伸ばしたオーキンドラフ様の手を、チャスラは横に飛ぶことで
掴もうとして空振りに終わった手を引っ込めても横に飛んでいるチャスラに、ミスリル鉱脈の有無を聞いてみる。
「ふむ、銀の鉱山でたまに見つかるらしいが鉱脈がある訳ではないのか。では銀の鉱脈はこの領地にあるのか?」
ミスリルの鉱脈は無いと答えたチャスラが、銀の鉱脈はあると答えた。
「おお!銀でも十分だ。どのくらいの深さにあるのだ?ユミルの身長で2人分か?3人分か?」
次々と人数を増やしていくけどなかなかチャスラが頷かない。20人を超えたところでようやく縦に飛んでくれたけど、自信は無さそうだったのでもっと深いのかも知れない。
「そこまで深いとなると掘るのは難しいかもしれんな。この領はどこを掘っても大体水が湧くのだ、それを避けて掘っていくとなると早々に水没する事になりそうだ。」
「チャスラは辿り着けているので協力してもらえば掘ることは出来ると思います。問題はそこまで深いと呼吸ができなくなる可能性が高いですね。」
湧き出てきた鉱山の知識によって酸素や有毒ガス対策についての重要性を知ることができたけど、水やガスの対策方法や採掘の仕方などの知識は出て来ない。せいぜいがツルハシや爆発によって採掘する方法だけどそれくらいなら私でも知っている。
「穴を複数開けて魔法によって新鮮な風を送るのが一般的だが、深すぎて地上からでは届きそうにないな。かといって露天掘りをしても池が増えるだけであろうし。」
どうにかして採掘出来ないか頭を悩ませながら机の上を見て、今考えるべき事は違う事だと思い出す。
「採掘方法は後でゆっくり考えましょう。今はミスリルと植物に関してです。」
「む、そうか?確かに外壁が出来てからでも遅くはないか。その方が守りやすいであろうしな。」
「この辺のミスリルは取り尽くしたんだよね?なら植物はもう育つ?」
チャスラがぴょんぴょんと縦に飛び跳ねて、ヒェロナでの問題が解決したことを確認する。
「ならばここで私達がする事はないな。後は担当の者に任せて私達は領都に戻るとしよう。
ミスリルは売っても良いが、出来ればユミルの武器に使うべきであろう。ミスリルは魔力を吸収し硬さを増す性質がある。ミスリルの含有量の多い武器は魔法を切り裂き吸収する事もできるらしい。
次の戦争の事を考えれば持っていて損は無いだろう。今ある分だけでは量が足りないかもしれんが他の村の分も合わせれば斧の刃くらいにはなるのではないか?」
確かに次回も同じ様な戦い方をするのであれば、また特大火球に狙われるのは間違いないだろう。その時に少しでも被害を軽くしてくれるというのなら持っている価値はある。
この鉱石がいくらなのかは分からないけど、命には変えられないと言うし、毎回大火傷なんて私もしたくない。
「分かりました、それではこれは頂きます。」
「うむ、うまく使いこなせればグラウンドタートルの討伐も楽になるだろう。期待しているぞ。」
机の上に置かれた10個ほどの鉱石を袋に入れ、影の部屋にしまおうとしたけど入らない。どうも影に流した魔力まで吸収してしまっているらしい。
落とさないように腰にきつく縛り付けると、袋が鎧にぶつかるたびに魔力が吸収される感触がある。
どうしたものかと考えたものの結局斧の
ヒェロナ村で一晩を過ごし、領都への帰途の馬車の中。オーキンドラフ様はまだ悩んでいるのか唸り続けていた。
それにしても300m以上離れた所に影響を及ぼすなんて信じられない。こうしてすぐ横にあっても魔力が吸われる感覚なんて感じ無いけどな。
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神の
通常の銀とほぼ変わらない見た目をしているが、保有している魔力によって淡く輝いて見える。
周囲から魔力を吸収し硬度を増す性質を持っており、魔力を吸収させるほど硬くなる。
銀鉱石が長期間地脈に晒され続ける事で銀が変質し、魔力を吸い続ける事で変質を維持する。そのため地脈の流れが変わり吸収する魔力が減少すると、吸収する範囲を広げしばしば環境に影響を与えることがある。
人工的に銀を変質させる実験が行われたが銀貨1枚をミスリルにするために10年もの間魔力を
魔力の豊富な空気に触れることで安定をするため、保存をする場合は空気の流れの良い場所に保管するのが良い。魔力を遮断する箱で保管した場合、ただの銀に戻ってしまうことが確認されており保管方法には十分な注意が必要である。
また魔力過敏症などの病気の患者に持たせることで症状を緩和させることが出来るが、子供に持たせ続けると成長が止まる事が確認されており、適度に離す必要がある。
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