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門を通って街の中に入ると、まずは宿をとって先触れを出した。40人近い大所帯なので宿を貸し切りにして兵士は雑魚寝になる。
早馬を出して予定を合わせているとはいえ、相手の予定もあるのでそれまでは大人しくして過ごす事になる。
借りた部屋でお茶を飲みながらオーキンドラフ様と雑談をしていると、帰って来た先触れの兵士が2、3日で予定が空くので、滞在中は客用の屋敷を使ってくれと言われたらしい。準備があるが明日から使用可能だそうだ。
いつ来るかも分からない客用に専用の屋敷を建てるなんて豪勢なことだ。まぁうちの村も今、家が足りなくて困ってるから外壁の拡張が終わり次第兵舎を建てることになってるんだけど。今後を考えると宿も増やしたほうが良いよね、木材を買い付ける商隊って結構人数多そうだし。
大人しく過ごすといっても欲しい物はスペンサーに言って買ってもらっていたし、大口の出費が決まっていて節約が必要な現状、街に出て買い物って気分でも無いから訓練でもしてようかな。
翌日はオーキンドラフ様は物資などを都合するため朝から仕事をしていたけど、屋敷への移動は午後からなので、暇な私は宿の裏庭で兵士と模擬戦をして過ごしていた。
鎧は着ているものの訓練なので攻撃を無視して反撃なんてせず、きちんと武器で対応して1対1を行う。
オーキンドラフ様と訓練法を交換で教え合い、最大出力を鍛えているおかげだろうか?以前よりも力が増していて訓練用の戦鎚を扱う速度がかなり早くなった。
私の護衛として付けられた5人の兵士とスクマリーナ達見習いが、魔力切れと怪我で休憩中の今はリフテットと対戦している。
「はっ!」
回り込んで兜の死角から斬り付けてくるリフレットの剣を勘で防ぎ、視界の外に行かないように牽制を行って移動を封じる。
元騎士家だった頃の感覚が身体に残っているのかリフレットはかなり強い。特に盾を使ってこちらの視界を塞ぎ、回り込んでくる技術は私との訓練を続けているうちに身に着けたんだけど、本当に私と相性が悪くて受けるのを失敗して何度も判定負けにされてきた。
おかげで勘で背後や横からの攻撃に反応できるようになって来たけど、まだ成功率は半分くらいだ。
今回は運良く受けに成功して、再び突き出そうとしてきた盾を戦鎚で殴りつけ、ふらついたリフテットに追撃をおこなって転ばせる事が出来た。
そこに武器を突き出せば判定勝ちとなる、ちなみに私は頭と胴体に攻撃を受けたら判定負けという設定の訓練だ。
「すみません、私も休憩させてください。限界のようです。」
「分かったいいよ、次相手できそうな人いる?」
普段は盾を殴ったくらいではふらつかないのだけど、流石に連戦のせいで体力が限界らしい。兵士達が皆リタイアしているのでリフレットに頑張ってもらっていたけど、代わりに相手をしてくれる人は…と休んでいる兵を見ると目をそらされた。
「仕方ない、代わりにアミットに相手をしてもらおうか。」
「い、いえ。流石に他領の街中で魔物と戦うのは問題になりますのでご
そろそろ昼食の時間ですから汗を流されてはいかがでしょうか?」
アミットは丈夫で自己回復も出来るので私の訓練相手として優秀で、テースドラフでは私だけでなく見習い達の訓練相手としても最近は
確かに子爵家の兵士に見られて、間違えて討伐されても困るし止めておいたほうが良いかもしれない。
「それもそうだね、それじゃあ怪我の治療が終わってない者を残して解散で。といっても護衛はいないと駄目だから見習い達だけだけど。」
治療を済ませ、軽く鎧の汚れを払った後。お湯を用意してもらって部屋で体を拭く。
貴族になって嬉しい所はこういう時に水じゃなくてお湯が使えるようになった事だよね、雪が積もらないとはいえ冬に水で身体を拭くのは中々に応える。身体強化で風邪を引かず火球で部屋を温められるとはいえ寒いものは寒い。それに夏場もお湯のほうが汚れが落ちる気がするので気持ちがいいし。
昼食を食べながらオーキンドラフ様と話をしていたら、明日は街へ買い物に出ることになった。この街は石材だけでなく水晶の産地が近いとのことで、良いものがあれば今のうちに買って社交シーズンの準備をしないといけないそうだ。
出来れば次回はカネの絹布を使ったドレスを用意して宣伝をしたいので、それに見合った装飾品も必要になってくるらしい。
それと護衛の魔力を使い切らせてはいけないと注意を受けた。他領では貴族でも強盗に合うことがあるらしい。大体は裏で暗殺の依頼を受けた犯罪者らしいけど、恨みはどこで買っているか分からないので油断は出来ないんだって。
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