074

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072話の最後に魔力を吸う木の説明を追加しました。

今後出てくる予定はないので多分見なくても問題は無いと思います。

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 前回よりも増えた馬車を連れて村へと到着し、デスマリードとヤースマン達から不在の間の報告を聞いている時、そういえばこの村の名前ってなんだっけ?と思って聞いてみた。


「一応スクル村という名前はありますけど、領主が変わったのですから名前を変えることもできますよ。」


「変える気は無いんだけど…私の名前と同じルが入ってるしこのままでいいでしょ。」


 答えてくれたデスマリードに名前を変えることを進められ、冷遇されやすい次男とはいえ死んでしまった父を大事にしてあげて?と、つい思ってしまう。


「了解致しました。後は職人を連れてくるということで布の生産は止めて生糸を溜めておきましたので、いつでも試作に入れます。」


「ありがとう、なら明日から早速糸を紡いでもらおう。」


「兵士の方は訓練の変更による混乱もなくなり、魔力持ちの再教育も済みましたのでいつでも戦場に連れていけます。まぁ定数が足らんのと実力不足なのは変わらないのですが。」


「兵士は新たに50名連れてきましたから定数は問題ありません。魔力持ちや傭兵経験者もいるので頑張って育てて下さい。」


「ありがとうございます。ようやく一安心といった所ですな、後は外壁が完成すればよいのですが今のペースですと2月近くかかってしまうかもしれません。」


 新しく連れて来た兵士を合わせるとようやく100人を超えて定数割れが無くなり、農民を畑仕事に戻すことが出来る。もっとも戦争に100人連れて行くと警備の兵士がいなくなってしまうので、まだまだ兵士は不足している。

 半農民なので訓練は続けてもらうけど、伐採もあったので畑に触れる時間があまり無かったからね。これからは伐採が免除されるから多少は楽になるだろう。


「伐採は畑を持たない新しい兵士に任せられるし、私とアミットも手伝うから出来るだけ進めてしまおう。目標は一ヶ月で伐採だけでも終わらせてしまいたいね、壁を作るのは時間がかかるだろうし。」


「そうですね、ここの木は重いので立たせるのが大変で、吊り用の台車も作ったのですが、縄がたまに切れてしまうのでもっと太い物が必要そうです。」


「あの縄は丸太を引いてるだけで切れてたもんねぇ、一応良さそうなのを多めに買って来ているから試してみて。」


 持ってきた物を伝え、足りないと思う物をリストにしてもらって、明後日戻る馬車に丸太と一緒に運んでもらい、オーキンドラフ様に用意してもらうつもりだ。

 久しぶりにきちんと仕事をしている雰囲気を堪能たんのうし、テースドラフでの美味しかった食事に思いをせながら食事をとった。

 この村の肉ってほとんど大ネズミの肉なんだよね、イノシシと比べても美味しくないし、せめてウサギ肉くらいの美味しい肉がこの村でも食べられるようになりたいな。

 次は牧畜にも手を出すか?と考えてはみたものの、外壁を広げても土地が足りないし大量の水や食料も必要になるから、新しく村を作ったほうが楽なんだよね。

 間伐で他の生き物も森で暮らしやすくして植生を変えてしまうのが楽そうだけど、そのためには邪魔な切り株を掘り出して、草の生える場所を増やしてやらないといけないだろう。いっそのこと一回チャスラを連れてきたほうがいいだろうか?

 スケイルリザードが来れない程度の範囲で、草食の動物が住める森が作れればいいんだけど。


 翌日から私とアミットは伐採した木の運搬を頑張り、カネのご褒美に好きな草を見つけては影の部屋に突っ込んでいく。アミットのご褒美は自分から食べられに来る大ネズミだ。

 見習い達も身体強化練習に運搬を手伝わせているけど、まだ身体が出来ていないので出力を上げすぎて早々にリタイアしてしまう。

 身体強化は元になる筋力が無いと、どれだけ強くしても大した効果は出ないからね。丸太を運ばせて魔力切れにした後、落とした枝を集めて運んでもらっているので、私がやっていた持久走みたいなものだね。

 この2ヶ月ですっかり切り株だらけになって、森には陽の光が差し込むようになり、同じ森とは思えない光景になっている。

 こうなると切り株が邪魔に思えてくるから、やっぱり次回からこっちに来るときはチャスラを連れてくることにしよう。魔物がいるから放し飼いは危ないけど、隣で切り株を掘り出しながら一緒にいれば襲われても大丈夫だろう。

 一晩で何本もの切り株を消失させたらしいので溶かす速度には期待している。

 今回村にいるのは新しい職人の様子を見て、1週間ほどで帰る予定であり。毎月1週間程度村に来て冷やかす事になっている。次回は少し早めに来て伐採の大詰めを手伝うことにしよう。

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