073

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072話の最後に魔力を吸う木の説明を追加しました。

今後出てくる予定はないので多分見なくても問題は無いと思います。

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 村を軌道に乗せることができ、領内で木が成長しない問題も解決し、出来る事が無くなった私は見習い達を鍛えながらのんびりと領都ですごしていた。

 男爵位に昇爵するためには領内に千人規模の街が2つ以上必要なので今はその選定と準備をオーキンドラフ様達がしているんだ。

 領都テースドラフの南西にあるヒェロナ村か、南東にあるカチュワ村が候補らしい。今まで村とか街としか呼んだことがなかったので、名前で言われても今一ぴんとこない。

 ヒェロナは王都側にあり、領都に来た商人達がよく通るため普通に考えるならこちらで問題は無いのだけど。カチュワは辺境伯領側にあり、派閥の付き合い的にはこちらに投資した方が派閥貴族への印象が良い、ということで意見が分かれているようだ。

 私としてはどっちも広げれば良くないか?と思うのだけど、街の外壁を作るためには石を買わないといけないので、同時にやると品不足や足元を見られて高くなるのだとか。

 ならば。と、カネ達の作った絹糸の試作品を教えて、王都側のヒェロナを勧めておいた。

 ついでに高品質化を手伝って貰いたいので、布関連の実績があるを者紹介してくれるように頼んだ。

 糸をつむぐにしても村では綿花を育てていなかったので、経験はあっても手慣れている者がおらず。織り機の調整も勘でやってもらっているので知識がある木工職人と機織はたおり職人も欲しい。

 水が豊富なこの辺の領地には、綿花を作っている村も多くあるらしいので、優秀な人がたくさんいるだろう。

 他にも思いついた欲しい物を伝えると、オーキンドラフ様がスペンサーに指示をだす。後はスペンサーが調べて雇ってくれるらしい、優秀だ。

 と言うことで指示を出した結果待ちの私には仕事が無く。暇なので訓練に参加したり、アミットに乗って見習い達と遠乗りしたり、グラウンドタートル討伐について行って参加したりして楽しく過ごさせてもらった。

 さすがに見習いにいきなりグラウンドタートルと斬り結べとは言えないので、魔法で遠距離から攻撃させてたけど、討伐が早く終わるので傭兵には好評だった。

 ゴードンが送ってくれると言っていたアックスヘッドも、何故か持ち手の棒がついた状態で送られて来た。丁度いいので暇つぶしに集めた砂鉄と一緒に古い方を整備に出しておいた。

 村からの手紙も問題は起きておらず、外壁もペースは落ちたものの順調に進んでいるとヤースマンから報告があったし、急いで向かう必要もなさそうなのでこの数週間はゆっくりさせてもらっている。

 週に一度グラウンドタートルを討伐して、後は暇を持て余すなんて傭兵みたいな生活だけど、一応オーキンドラフ様の仕事に同席して顔合わせとかはしてるんだよ?


「これが新しい糸と布ですか。似てはいますけど絹とは微妙に手触りが違いますね。」


「ええ、どうしても国外の物とは材料が違ってしまいますから。それに、糸の品質があまり良くないので、布にもそのまま出てしまっているでしょう?」


「確かに糸の太さもまちまちですし、布の途中で切れている物も多いです。」


 数週間後スペンサーが探してきた職人と面接を行い、雇った後でカネ達の糸や布を見てもらった。

 流石に雇う前に見せて情報が漏れたら村が危険だからね、兵士ももっと追加してしっかり守れるようにならないと。

 今回雇ったのは木工職人が1人、機織はたおりが2人、糸を紡ぐ職人が2人の計5人だ。綿の倍の値段で雇って成功したらさらに倍、売れたら追加報酬ありという一見美味しい話に誘われて来てくれた。

 実際にはあの村の住人はすでに村外への移動禁止の監禁状態なので、故郷に帰りたくても2度と帰れなくなるという貴族らしい求人となっている。

 申し訳なくは思うけど秘密を暴くために聞き込みや侵入なんて可愛い諜報ではなく、誘拐や村を焼き払って強奪していく、なんて事もあるので慎重にならざるをえない。

 それも敵国や隣国ではなく自国の貴族がやる事があるので、村で絹を作っていますなんて宣伝せんでんしてはいけないらしい。

 試作品を村人に配ってしまったけど、新しい領主が領民のご機嫌取りに質の悪いものを配った事にしておけと後から注意されてしまった。


「糸はすぐに改善出来ると思いますわ。見習いがよくやる失敗ですもの、生糸の強度もそんなに悪くありませんし。」


「糸が切れるから余り強く張らずにっている様です。これなら糸が改善して少し調整したら大丈夫だともいます。」


 職人達の頼もしい声を聞き、注文していた新しい織り機も2台完成したそうだし、近い内にまた村へ行けるだろう。

 そうそう、植林場の伐採が進んでチャスラが住んでいた大木も切り倒したのだけど、商人達が集まって来て大喜びで大金を払って買っていった。1枚板のテーブルを作れば王都の貴族に売れるらしい。

 切り倒した丸太に触れても魔力を吸われることは無かったので大丈夫だと思うけど、葉を集めて焼却したりと片付けは大変だったらしい。

 一晩経ったら切り株が消失していて騒動になってしまったけど、チャスラが溶かしただけなので安心するように伝えてもらった。

 根が深くてかなりの大穴が空いていたらしいけど、今は埋められて新しく樹木が植えられている。これも普通に比べたら成長が早い様だけど、数週間で大木になることはなく、膝丈ひざたけなえが胸の高さまで育ったくらいらしい。

 私の意見を取り入れてくれて、果実が生る木の他に木材としても優秀で油も取れるクルミを多く育てる事にしたようだ。ナッツ系は保存食としても優秀だし美味しいから良いよね。

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