024

 3台の馬車に次々と積まれていく物資の数々。予備の武器に鎧、馬の飼料しりょうに塩や水。干し肉、燻製肉くんせいにく、塩漬け肉と少しの野菜と酒樽さかだる酒樽さかだる酒樽さかだる

 この日のために作っておいた物が次々と乗せられて、馬車が壊れるのではないかと心配になってくる。

 この上さらに、今女達が焼いている硬い黒パンが入った袋まで、大量に積もうとしているんだから馬には頑張って欲しい。

 それもそのはず、100人の兵士が食べる数週間分の食料だ、村を守る最低限の兵士と見習いを残してみんな連れて行く。

 行軍中に15歳になる予定のゲルターク様も出陣する。魔力出力だけ見れば準男爵令嬢であった母君から受け継いだ、ゲルターク様がこの部隊の最高戦力となり、重要な火力だ。

 物資を積み終われば、見張りの兵を残してそれぞれがいを残さない様に過ごすため、家や酒場に散っていく。

 私は昨日やらかしたので、夕食の後、忘れていた食器を背嚢はいのうに入れたらやる事が無い。

 それでも寝るには落ち着かなくて、意味もなく鎧をみがきながら家族と普通に雑談をして過ごすのだった。


 翌日の朝は早く、皆が寝不足であくびをしている中。全員そろったのを確認して出発する。

 何処どこか悲しい笑顔で明るく送り出された私は、早々にただ歩くのに飽きた。重そうな馬車を押すのを手伝うことにしたのだが、夜中の見張りをして寝ていた兵士達にガチャガチャうるさいから離れろと言われ。

 ならば父達と話そうと思い、前に行こうとしたら馬がまぶしがっているから後ろへ行けと追い払われた。ひどいと思う。

 仕方無く最後尾を歩いて、暇だから魔物でもおそって来ないかと愚痴ぐちっていたら、見た目だけじゃなくて中身もお貴族様みたいだと笑われた。

 ゲルターク様も暇で早駆はやがけがしたい、とか魔物が狩りたいとか我儘わがままを言っていたらしい。


 2日もただ歩けばあきらめも付き、準男爵領を越え、男爵領を越えて辺境伯領で物資の補給と少しの休息を取ると、いよいよ国境の砦へと向かって歩き出す。

 今向かっているコンキエート砦は、辺境伯領から5日の位置にある。私達が所属するナミルタニア国で最大の砦だ。常時千を超える兵が詰めており、敵国へのにらみを効かせている。

 今回、辺境伯に招集しょうしゅうされた兵が集まれば、2万ほどの兵力となり。王都からの援軍が来るまで砦を防衛する事になっているらしい。

 援軍が到着したら5万から10万程の兵が集まると聞いて口が塞がらなくなる。

 だって騎士領から行くのはたった100人の兵士なのだ、数千人規模とか1万対1万くらいの戦いを想像していた。

 私一人暴れてもその数はどうにもならないなぁ、と的外れな感想を抱きながら、祖父の話を聞いて一緒に夜警をする。

 テントを張るのは貴族だけで、私達はマントにくるまって地面で寝るだけだ。

 雨が降っても木々の間に布を張るだけで、地面で寝るのは変わらない。

 私は虫も雨も全く気にならない性質たちだったらしく、鎧も着っぱなしでも熟睡じゅくすいし、食事の時以外兜すら外さない無精ぶしょうっぷりに。ゲルターク様がテントで寝るか聞いて来たが、そっちのほうが緊張する気がしたので丁重にお断りした。

 そんなこんなで2週間掛けて、砦まで来たけど私は元気だ。現地には砦からあふれるほどの兵が集まり、私達も外に陣地を敷く。

 と言ってもテントを建てていくつか旗を立てるだけなんだけど。

 到着した事で補給を受けられるので酒が振舞われ、私も初めて薄められていないワインを飲んだ。

 数口飲めば半分以下になってしまうので、皆がより長く楽しむ為、薄めるのに魔法で水を出してくれと頼んで来るのには笑ってしまった。わざわざ不味くしてでも多く飲みたいらしい。

 周りの他領の兵を見ても、歌ったり肉を焼きだしたりとかなり自由だ、まるで戦争などなくキャンプを楽しむ為に集まったかの様だった。




____________________

リトルミニスカベンジャースライム


 リトルスカベンジャースライムよりもさらに小型のスカベンジャースライム。

 自身の身体を圧縮することにより、酸も濃縮し消化速度を高めた。

 さらに副産物である肥料も、植物達をより強く成長させる効果が向上し、濃縮された液体となることで吸収しやすくなった。


 リトルスカベンジャースライム同様、自然界で生まれる個体ではなく。濃密な魔力をめたなかば脅迫きょうはくの様な命令に、生命の危機を感じた個体が周囲の濃い魔力を吸収して進化する事がある。

____________________

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る