009

 何ヶ月か経って、私の武器は結局戦斧に決まった。

 盾に才は無く、敵を見るために盾を下げれば頭を叩かれ、横に回られれば気づかずに背中を打たれ、攻撃に出れば盾の存在を忘れて、反撃を武器で受け始める。

 槍はまだましだったが、何度も持ち手で受ける癖が出てしまい、突きと払いで敵を間合いの中に入れない、というのがどうにもじれったくて性格に合わずにやめた。

 両手剣はきちんと教えてもらえば一番近かったと思うが、意外と刃筋はすじを通すのが難しく、受けに回ると取り回しが悪いと性格に合わなかった。

 一応弓もやってみたけど、命中率はいいけど引いて狙って射つだけでつまらなかった。狩りには使えるので訓練は続けようと思う。


 しばらくはあの棒で訓練して、いずれ金属の棒に変え、アックスヘッドを後から付けるということになったのだが、重装歩兵は全身鎧も必要だ。

 父のように胸当てと兜、腕当てとすね当てだけの様な簡易鎧ではなく、文字通り全身を覆い隠す必要がある。重量は軽くても20kgを超え、武器を合わせると30kg以上になる。

 片手剣なら5kg、簡易かんい鎧を合わせても15kgほどで、革製ならもっと軽く安く出来るのだから値段はして知るべしである。

 貴族である騎士ですら、剣が折れれば買い替えに頭を抱えるというのに、その6倍もの鉄で装備を作ろうというのだから恐ろしい価格になる。しかもすべて鋳造ちゅうぞうではなく鍛造たんぞうの一点物だ。

 鉄を用意するだけでいくらになるか分からない。このド田舎の家ならば一軒どころか二、三軒は家が建てられそうだ、父が頭を抱えるのは当然だろう。

 値段もすごいが重量の問題もある。行軍の際にはさらに10kgの背嚢はいのうを背負い、馬にでも乗せなければ移動するのも難しい重装備なのだが、現在の私は5歳を過ぎたばかりなのに、魔力があれば2つの背嚢はいのうを背負って走れるようになっている。成人まで後10年、できれば4つ背負って軽々と移動できる様になっておきたい所だ。


 重量の問題は時間が解決してくれそうだけど、お金の問題が残っている。現状、私は金を稼ぐ暇なんて無く、装備がすべて買えるかは怪しいと思っている。

 仮に買ってもらえたとしても、女が結婚するには持参金という物が必要になるらしいので、確実にしわ寄せが妹達に行く事になるだろう。

 そこで私は工賃は無理でも、せめて鉄だけでもどうにかしようと考えた。鉄鉱脈などどこにあるかは分からないし、あっても行く許可が降りないだろうから、やるのは砂鉄集めだ。

 魔力を磁力に変えて地面をすべらして、麻袋に入れて消す。これだけで意外と集まるのだ。

 まぁ地表部分しかやっていないので頭打ちではあるのだが、私は暇を見つけては砂鉄を集めることにした。1,2週間で1kgほど集めることが出来たので、なんとかなる気がする。

 両親にも話をし、村から出ないならと許可をもらったので、暇を見つけてはちまちまと集めている。


 そして母がまた子供を生んだ。ゾーラという名の女の子だ、私はあまりかまってやれていないけど、残る姉妹3人がお姫様のように可愛がっているので大丈夫だろう。

 一瞬下手だと女の子ばかり生まれるという知識が湧いてきたが、すぐに反対かもしれないという研究結果も湧いてきたので関係は無いのかもしれない。

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