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 朝起きれば早々に、自分を指差しながらキレイキレイと言っている母達とついでに姉に魔法を使い、朝食を食べさせてもらう。

 姉はどうやらキレイにすると母達が喜ぶということをこの騒動で覚えたらしい、テーブルを拭くのをやりたがったり、掃除を手伝ったりして褒めてもらっている。姉可愛い。

 私の方は自分の部屋の床をキレイにして、ごろごろしながらどこまで範囲を拡大できるかを試している。

 魔力を薄くしすぎるとほこりが少し残ったり汚れが落ちなかったりするので一部屋を一度でキレイに出来る様に丁度良い魔力量を試している。

 散歩で家の中の目に入った部屋をキレイにするのだ。母が妊娠し、後何ヶ月かしたらこの家の何処かの部屋で出産するのだ。

 汚い部屋での出産は母子共に危険らしいので今から徐々にキレイにしていく予定だ。

 部屋一面に魔力を広げると、流石に一度で掃除を終わらせることは出来ない。魔力量も結構使うし何十回も打つには魔力が足りないから、何日もかけてキレイにしていくしかないよね。

 後は回復魔法の練習も必要だろう。お産部屋に子供は入れないだろうが、出産後に生きているうちに会うことができれば母も子供も助けられると思う。


 腰を痛がる母や祖母に痛くない魔法で治療し、たまに怪我をして帰ってくる父と祖父の傷を治して練習した。

 何日かすると怪我をした兵士や、農民が連れて来られて治療をさせられた。指を失った場合は私の魔法では生えてこないらしい、気をつけよう。

 命の危険がある様なひどい怪我の人は連れて来られないけど、切り傷くらいならちょくちょく来るようになった。

 いい練習台にもなるし、キレイにしてから痛くないで治療した方が、魔力を使わない事をしれたのは朗報だろう。


 数ヶ月が経ち、準備万端整えて待っていたお産がついに始まった。

 部屋に閉じ込められた私達姉妹には出来ることはないが、近所の女性達がたくさん来てバタバタと忙しそうな音を立てている。

 しばらくすると慌てて呼び戻されたのだろう、父が鎧と剣をつけたまま私達と一緒に部屋に監禁された。

 土で汚れていたのでキレイにしてやったが反応は無く、椅子に座って腕を組んだまま、落ち着き無く貧乏揺びんぼうゆすりをする様子を、姉が不安そうに見ている。

 遊んで欲しいのか父をじっと見て止まっている姉を見て、私は父に近づいて揺れている足を掴んで止める。

 離せばまた動き出すのだが、何度か繰り返すうちに遊んでいる様に見えたのだろう。近づいてきた姉が同じ様に掴んでは離しクスクスと笑う様になった。

 父も流石に気が付いたのだろう。足を大袈裟おおげさに揺らす様になり、私達が掴んでも無理矢理動かす様になった。

 止めようと抱き着けばそのまま歩きだし、最終的には私と姉を両脚に抱き着かせて、部屋を何周も歩き回った。

 思えば父とこんなに一緒に遊んだのは初めてかも知れない。毎日、日が暮れてから帰って来るし、たまに朝から居ても私は一人遊びばかりしている変人だ。父に構われても、ある程度付き合ったら飽きて違う事を始めていた。

 そんな家族の団らんを過ごし、昼食を食べて、私達姉妹が昼寝をしている間に出産は終わったらしい。

 寝ているところを起こされた私達は、父と祖母に抱かれて母のいる寝室へと連れて行かれた。

 疲れ切った表情の母と、しわくちゃの赤ん坊にまずは回復魔法をかける。

 母の青白かった顔に少し赤みがさし、微笑んで頭を撫でてくれた様子を見て大丈夫なのだろうとホッとする。

 赤ん坊はすでに寝てしまったのか、あまり動かないがとても小さい。1年ほど経てば私と同じくらいになるはずなんだが、こんなに小さくて大丈夫なのだろうか。

 姉も赤ん坊を見て一度触ろうとしたが、祖母に止められて今は見て声をかけるだけだ、今は寝ていて反応は無いはずなのに何故か楽しそうに話しかけている。

 父は母の額にキスをした後、頭を撫でて会話をしている。疲れているからそう見えるだけだろうか、母が少し残念そうに見えた。

 一通り挨拶が終わると、母を休ませるために私達は部屋を出る。

 出産を手伝った女性達が、使った布や鍋などを片付けていたのでキレイになる魔法で手伝った。

 片付けが終わったら、祖母の主導で大量の料理を作り出した。手伝ってくれた人達に料理を振る舞うんだろうが、でかい寸胴鍋ずんどうなべ2つに満杯のスープが人海戦術で作られ、大量に練られたパンが次々と焼かれて配られていった。

 今日のスープはいつもより塩味が濃かった気がする。

 

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