未知
放課後。
私は待ちきれずに傘をさして、小走りに校門を出た。
わき目も振らずにただ進む。
丘の上にある小さな裏山へ。
海と山のある私の町は俗に言う「田舎」と言うやつだ。
裏山に着くと、そのまま遊歩道を進んで、途中で立ち止まる。
そしてわき道さんほとんど獣道だけど……に入っていく。
最初は怖かったけどもう慣れた。
そのまま進むと、やがて小さな池に出る。
私は胸をときめかせながら言う。
「ただいま。待った?」
目の前の……10メートルはあろうかと言う、巨大な女の子に。
※
女の子に会ったのは、当たり前だけど偶然だった。
中学で転校したばかりで友達の居ないわ私は、山歩きが好きだったこともありブラブラと家の裏にある小さな山を歩いていた。
そこで好奇心から獣道に入った私は道に迷った。
日が沈みそうになり、さすがに心細くなった私は周囲を見回すと池が目に入った。
それと共に、明らかに不自然な景色も目に入った。
なに……あれ?
池のところに明らかに不自然に大きな……腕や足が見える。
心臓が破裂しそうになりながら向かうと、そこにいたのが巨大すぎる女の子だった。
彼女は裸で、何を言っても言葉を返さない。
無表情だ。
ただそこにいるだけ。
受け入れもしないけど拒絶もしない。
その空気感が心地よくて、それ以来毎日のように彼女の元に通い詰めた。
その内、女の子が私を見るようになった。
ただ見てるだけ。
なんの感情もない。
でも嬉しかった。
そんなある日。
いつものように池に行ったら、そこには軍隊みたいな服を着た人たちが沢山居た。
その人たちは私を見て「ここは立ち入り禁止だ」と言って追い払おうとした。
なに……これ?
怖くなった私が女の子のほうを見ると、彼女と目が合った。
相変わらず感情は見えない。
すると、背広姿の男性が私を見て言った。
「君はこの前もこの生物に会ってたね? もしかして……関わってるのか?」
その目はまるで爬虫類のようで、私はよく分からないけど、とてつもなく怖くなった。
このままここに居たら、もう二度とパパやママのところに戻れない。
そんな気がする。
そうだ……彼女は私のことなんてなんとも思ってない。
だったら……うん、だったら大丈夫だよね。
「いいえ。こんな生き物知りません」
そう言ったとき。
それまで池の中にずっと座ってた女の子が立ち上がった。
そして高いビルみたいな大きさになると……飛び上がって、そのまま空の向こうに飛んでいった。
……いなくなっちゃった。
呆然としている私を背広姿の人が「この子の話を聞きたい」と言って、捕まえようとしたとき。
突然、地面が大きく揺れた。
それは立っていられないくらいで、そのうち目の前の木々も激しく揺れだした。
地震だ……
パパ……ママ!
思わず顔を伏せてうずくまった私の耳に、ずっと遠くから聞いた事もない地鳴りみたいな音が聞こえた。
なに……
顔を上げた私の目に映ったのは、ずっと向こうの海の方から迫る、雲まで届くかと思うくらいの津波だった……
【終わり】
今日お見せするお話は以上になります。
休日のお昼間にわざわざご来店いただき有難うございます。
良ければジャスミンティーでもいかがですか?
未知の出会い。
それはファンタジックでワクワクするような冒険の始まり。
日常を一変させるような出会い。
私もそんなSFやファンタジーを沢山見ました。
映画でもドラマでも小説でも。
特に未知の存在との出会いってロマンティックですよね。
でも、考えてみれば「未知の存在」って事は「理解できない」って事ですよね。
私たちが昆虫や動物の心を理解できないように。
ただ、少女と巨人の女の子は最後には心が通じたのかもですね。
さて、ライムも約束通りに現代を舞台にした一瞬をお持ちしましたね。
感心感心。
では、ごゆるりと午後のひと時をお楽しみ下さい。
あ、ちなみに私はちゃんと同じ日本人ですのでご安心を。
私の心?
ふふっ、それはここの常連になって頂けたら……なんちゃって。
ごめんなさいです。
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