第56話 誤解

「グミちゃんさん」


 あたっちが、気になって声をかける。


「はい?」


「ダンジュウロウさんが、もう一度会いたいと言っていましたよ」


 と、伝えると、


「ダンジュウロウさんって?」


 首を、かしげるグミちゃんさん。


「空まで浮かせて、海岸まで連れて行った人のこと、覚えてない?」


 ダンジュウロウさんのように、手振りで伝えるあたっち。


「あー、あの。なんで? 文句が言いたいのかしら」


 人差し指を、ほっぺたにくっつけるグミちゃんさん。


「いや、そういうことじゃなくて、話がしたいらしいんだよ………」


 誤解しないように言うと、


「あぁ、そうなんだ。わかったわ。ワタシも、しっかり確認しなかったし」


 照れ笑いするグミちゃんさん。


「ところで、誰と勘違いして拉致したの?」


 と、クニヤスが聞くと、


「いやね………キザミって鬼を退治しようとして───」


 と、言うので思わず、


「キザミ!!」


 森の中に、響くぐらい叫んでしまった。


「えっ?」


 ビックリして、目が点になるグミちゃんさん。


「知ってるの!?」


 グミちゃんさんが、キザミを狙っている?


「うん、まぁ。あなたも?」


 モジモジするグミちゃんさん。


「あたっちは、おっかさんを殺された。あなたもそうなの?」


 そう、あたっちが言うと、


「あッあッ、そうなの? 気の毒に。ワタ───」


 あたふたするグミちゃんさん。


「同じ境遇の人に会えて、よかったわ。必ずキザミを、退治しましょうね!!」


 グミちゃんさんの手を握るあたっち。


「あー、うんうん。そうだよね。必ず、退治しよう。一緒一緒」


 苦笑いするグミちゃんさん。


「よし。強そうな仲間が増えたぞ~」


 クニヤスは、目を輝かせる。


「仲間?」


 グミちゃんさんが、いぶかしげな顔をする。


「そう。あれ、一人いないな。おーい」


 体が重いせいか、坂道で、もたつく武者フウウ。


『ハァハァ。やっと追い付いた。うげッ!?』


 グミちゃんさんの顔を見るなり、ビックリする武者フウウ。


「グミちゃんさんが、仲間に加わったよ」


 クニヤスが、そう言うと、


『あ゛ッ。そうなの? アハッ』


 身震いする武者フウウ。


「あれ? どこかで、会ったことが───」


 仮面の中を、のぞき見るグミちゃんさん。


『ないです、ないですぅ』


 両手を振る武者フウウ。


「うん。そうだよね」


 ゾクッとして、顔をそむけるグミちゃんさん。


『ハイイ~』


 ホッとする武者フウウ。


「そういえば、ハタノさんは、なぜ倒れていたんですか?」


 クニヤスが、起き上がったハタノさんに聞くと、


「養老怪姫に遭遇しまして、三味線に仕込まれた毒にやられたようでありまする」


 と、説明するハタノさん。


「三味線の毒? どんなのですか?」


 そう、クニヤスが聞くと、


「はい。傷口は、浅かったのですが、血が止まらないようになってしまいまして」


 傷口を、圧迫しても止血が出来なかった。


「そんな毒が………」


「今は、ふさがっていますね」


 少し、へこみがあるくらいで治っている。


「グミちゃんさんのおかげで、痛みもなくなりました。ありがとうございます」


 頭を下げて、礼を言うハタノさん。


「エヘヘ、よかったね」

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夢幻想武勇伝~幼なじみが、おじさんにとられそうですSOS!~ なばば☆ @bananabanana1E

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