第52話 武器が持つ力

「ごめん」


 あたっちが、夕飯の支度をしていると、ミツクニさんが戸を開けて入ってくる。


「ああ、ミツクニさん。あれ?」


 なーんか、様子が変わっているのよ。


「あっ、ミツクニさん。おや、雰囲気が違いますね」


 クニヤスも、空気感の違いに気付く。


「そんなに、違いますかな?」


 アゴをなでるミツクニさん。


「なんだろう………そうだ、腰に刀をさしていますね」


 姿を上下にながめたクニヤスが、ポンと手を打つ。


「カッカッカ。どうじゃ、この刀?」


 鞘に入れたまま、クニヤスの前に出すミツクニさん。


「なんか、スゴいですね」


 さわらずに、じっくりと刀を見るクニヤス。

 刀からは、独特の殺気のようなものが流れている。


「おお、感じるか。そうじゃ、スゴい刀じゃ」


 嬉々とするミツクニさん。


「この刀は、どうされたのですか?」


 と、クニヤスが尋ねると、


「つい、さきほどツタマヤに、頼んでおいたのが届いてな」


 どうやら、ツタマヤさんに頼んで、取り寄せしたらしい。


「あっ、ツタマヤさん。なるほど………」


 腕組みして、納得するクニヤス。


「スゴい切れ味じゃぞ。鬼切りと、名がついておるだけあるわ」


 どうやら、昔の名刀らしい。


「するってぇと、もうなにかを切ったので?」


 ミツクニさんが、そう感想を言うので、興味がわくクニヤス。


「うむ。まぁ、それよりハタノがヤツを見つけ追っていてヤバい」


 話題を変えるミツクニさん。


「ヤツって、キザミですか?」


 あたっちが聞くと、


「いや、残念ながら養老怪姫じゃ」


 手をパタパタさせるミツクニさん。


「それは、助けに行かないと」


 クニヤスは、やる気になっているんだけど、


「待ってクニヤス。なんで?」


 止めるあたっち。


「だって、仲間じゃないか!?」


 なぜ止めると言わんばかりのクニヤス。


「えっ、うん、そうだけど」


 のけぞるあたっち。


「どこですか、ミツクニさん。案内してください」


 すぐ、道具をまとめて、出ようとするクニヤス。


「おう。こっちじゃ」


 走り出すミツクニさん。


「待って、あたっちも行く」


 汁が入った鍋を、火から下ろして錨を担ぐ。


『アタシも行くわ』


 奥から、武者フウウも出てくる。


「ニャ~ン」


その頃


「ハッ! ハッ!」


 薄暗い森の中で、養老怪姫に突きを繰り出し続けるキザミ。


「フフフ。えいっ」


ズバッ


 スキをついて、三味線から出たトゲをキザミの腹部に刺し込む養老怪姫。


「グハッ」


 口から、血を噴出するキザミ。


「フッ。口ほどにもない」


 口角を上げる養老怪姫。


「ぬかせ。効いてないわ」


 腕で、口をぬぐうキザミ。


「フフフ、どうだか」

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