第51話 きれもの

「あんた、ずいぶんと年をとってるみたいだけど、本当にやれんの?」


 サーシャが、上から挑発するように気づかうが、


「まぁ、まかせなさい!」


 自信マンマンのミツクニさん。


「ふぅ~ん。逃げるなら、今のうちだよ」


 一応、サーシャが警告する。


「カッカッカ。では、まいる!」


 高笑いするミツクニさん。

 刀が、あやしい輝きを見せる。


「ピギャア」


 ものすごい早さで、ミツクニさんに突進するヘルクリナ。


「あぶない!」


ズバシュ!


 一閃振りぬくミツクニさん。

 ヘルクリナの開いた口が、さらに切り開かれて、尻尾まで裂ける。

 しばらく、ピクピクとしていたが、黒い霧になって消える。


「ふぅ、さすが鬼切りと、うたわれるだけあるわぃ」


 惚れ惚れと、刀を見るミツクニさん。


「すっ、スゴっ」


 ハタノが、息を飲む。


「おっさん、やるな!」


 顔が、明るくなるサーシャ。


「さあ、次々と切るぞ」


 張り切るミツクニさん。


「あいつら、さっきと動きが違ってる」


 ねずみが、警戒していると、


「ンパ」


 そのうちの一匹が、なにかを吐き出す。


「あぶない!」


ジューン


 ミツクニさんに、めがけて飛んでいった毒液。

 その間に、かばうようにサーシャが入って、毒液を浴びる。


「あ゛あ゛あ゛ーッ」


 蒸気をあげて、服が溶けて、肌も焼いていく。


「サーシャ!」


 ねずみが、叫ぶ。


「クッ! なんたる不覚! お嬢さん、大丈夫ですかな?」


 ミツクニさんが、サーシャを抱いて起こす。


「えぇ、大丈夫です。けど、服に穴が開いてしまいました」


 普通に、しゃべってはいるが皮膚の表面が溶けている。


「いや、それどころの騒ぎではなかろう?」


 どん引くミツクニさん。


「ミツクニさん、その人は大丈夫です」


 ハタノが、そう言うと、


「大丈夫っつったってよ!?」


 つっこむミツクニさん。


「それより、怪物の方を倒すのが先決です」


 ねずみが、冷静に言う。


「そうじゃな。仇は、とってやるぞ」


 そっと、寝かせるミツクニさん。


「はい」


 もう、蒸気はたっていない。


「おりゃああああ」


ザン! ザン! ブシュッ


「ピギラ」


 一気に、たたみかけるミツクニさん。


「よし、あと一匹を残すのみ」


 ミツクニさんは、まだ呼吸が乱れていない。


「ピーア」


 危機感から、逃げ出すヘルクリナ。


「待てぇ! 待たぬか!?」


「わたくしが、仕留めます。このことは、ご内密に。これにて」


 ねずみが、そう言うので、


「あぁ、こうげんはせぬゆえ安心いたせ」


 と、言うミツクニさん。


「はい。サーシャ行くぞ」


 寝ころがるサーシャに声をかけるねずみ。


「はいっ」


 ピョンと、飛び起きるサーシャ。

 肌は、キレイになおっている。


「えっ、傷口がなおっておる」


 目玉が、飛び出すほどおどろくミツクニさん。


「それでは」


 一礼して、ねずみの後を追うサーシャ。


「おう」


 刀をしまって、ニコッと笑うミツクニさん。


「ねぇ、ミツクニさん不思議でしょ?」


 ハタノが、そう言うと、


「あぁ。あの者も、同じく妖怪の類いか?」


 アゴをなでるミツクニさん。


「さあ、詳しくはわかりませぬ」


 首を振るハタノ。


「さようか。私は、クニヤスのところに行くが」


「わしは、養老怪姫を探しますので。ヤツがあの怪物を発生させたので、放ってはおけませぬ。これで」


 そう、ハタノが言うので、


「うむ、ずいぶん疲れがたまっているようじゃから、気をつけてまいられよ」


 気遣うミツクニさん。


「お気づかい、ありがとうございまする。では」

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