第49話 人に化けた竜
「そんなもの!」
サーシャが、飛び上がり拳を振ろうとすると、
「待て! サーシャ!」
止めるねずみ。
「フフフ、ヘルクリナ! ヤツらを喰い殺せ!」
養老怪姫が、三人を指差すと、
「ガウグル」
赤い目を三人に対して向け、よだれを流しながら飛んで来る。
「はぁぁあ」
ヘルクリナの横っ面に、右手の拳をぶつけるサーシャ。
「ググ」
一瞬、動きを止めるヘルクリナ。
だが、
「きいたか………なにっ」
きびすをかえし、大口を開けるヘルクリナ。
「ガワワ」
「クッ………腕が」
ヘルクリナが、サーシャの右腕に噛みつき、強引に喰いちぎる。
傷口を、握って止血する。
「おい! 大丈夫かあんた!? 腕を………」
その様子を見たハタノが、心配するのだが、
「大丈夫だ。問題ない」
と、ねずみが答える。
「えっ!?」
ねずみの顔を見るハタノ。
「見てろ。じきに生える。それより、この状況は厄介だぞ」
ヘルクリナは、スレスレをビュンビュン飛んでいき、攻撃をうかがっている。
「生えるって………そんなバカな」
腕が復活するなど、にわかに信じがたいハタノ。
「おい、そっち行ったぞ!」
ねずみが、合図する。
「うわッ!!」
ハタノが、剣で受けるが、その剣に噛みつく怪物。
「まぁ、せいぜいヘルクリナの相手でも、してなさいな。それじゃあね」
手を振って、サッと姿を消す養老怪姫。
「待て! クッ………」
追いかけようとするが、ヘルクリナに阻まれる。
「この数は、マズいな」
一匹やニ匹なら、三人でなんとか倒せるが五~六匹が、交互に攻撃して来る。
「フフフ、イイ気味だわ」
上空から、ヘルクリナが攻撃している様を見ている養老怪姫。
「おい、お前」
そこへ、鬼のキザミがやってきて、
「なんだ。鬼か」
ため息まじりで言う養老怪姫。
「たしか養老怪姫とか言ったな。オレと組まねぇか?」
手を組もうと、持ちかけるキザミだったが、
「誰が、あんたみたいな下等なのと」
つれない返事をする養老怪姫。
「むぅ。あんたの能力を使えば、もっと効率よく人間を喰えると思うんだ。今のままだと、オレは一晩で3人くらいしか得られない」
暗に、取り分を分けようと言うキザミに、
「ごめんこうむるわ」
針にも棒にもといった養老怪姫。
「………だったら、同じ人を喰う
いくら江戸に、たくさんの人がいるとはいえ、そうそう機会などない。
捕まえておいたところで、すぐ逃げられる。
「だったら、なんだって言うのさ?」
半笑いで聞く養老怪姫。
「ここで、始末してやってもイイんだぜ?」
指の関節を鳴らすキザミ。
「鬼風情が。誰に対してものを言っておるのだ?」
養老怪姫が、少し殺気をたてると、身動ぎするキザミ。
「交渉決裂だな。くらえッ!」
拳を、養老怪姫の腹に当てるキザミだったのだが、
「フフフ。その程度じゃあキズひとつ付かないわ」
はじき返す養老怪姫。
「さすが、竜だな」
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