第38話 夜更かし

「おお、リリ」


 見回りが終わって、夜も更けた頃に家へと帰るあたっち。

 おとうちゃんが、起きて待っている。


「ただいま~」


 なにか、話があるのかな?


「最近、なまら帰りが遅いけどなにしとる?」


 珍しく、真剣な顔をするおとうちゃん。


「別に………」


 あまり心配させたくないので、ごまかすあたっち。


「おかあさんの仇をとろうとか、しとらんね?」


 核心を突くおとうちゃん。


「クニヤスの家に、遊びに行ってるだけだよ」


 なんとか、とりつくろうとするが、


「でも、今日クニヤスくんの家さ行ったら、人っこ一人いなかったべ」


 あたっちたちが、見回りに出た後で、ちょうど居ない時だったみたい。


「ちょっと、出かけてただけよ!」


 ヤバい。どこまで知っているんだろう。


「おとうちゃん心配だよ」


 鼻の穴を、大きくしてヒクヒクする。


「大丈夫だから、ほっといて」


 ちょっと、笑ってしまいそうだったわ。

 部屋に、駆け込む。


「ちょっ、おま」


 地団駄を踏むおとうちゃん。


「まぁまぁ、まんず様子さ見るべ」


 おばーちゃんが、いさめる。


「う~ん。無理さ、しなきゃイイんだが!」


 ワザと、大きな声を出すおとうちゃん。


「さあ、寝るべ寝るべ」


次の日


「見つけたぞ! キザミ!」


 騒ぎを避けるように、空中を飛んでいたキザミを、発見するグミちゃん。

 ここ数日、探し続けていた。

 まだ、夜は明けていない。


「へへっ、グミちゃんか」


 ため息まじりで、笑うキザミ。


「グミちゃんか、じゃないわ。あれほど、人を喰うなとクギを刺していたのに」


 ちょうど、ミズノ屋敷の惨状を目撃して、そこから逃げるキザミを、ようやく捉える。


「あ~、もしかして見られた?」


 悪びれることなく、あっけらかんとしているキザミ。


「やたら隠れて、コソコソやってると思えば」


 屋敷に、押し入って全員を惨殺する手口だ。


「まぁ、イイじゃないか。こんなにたくさんいるんだし、たしょう───」


 そう言いかけるキザミに対して、


「黙りなさい」


 空中に、魔法陣を出すグミちゃん。


「オイオイ。どうしようってんだ!?」


 半笑いのキザミ。


「あなたを、抹殺します」


 魔法陣から、炎の矢がニョキニョキと無数に出てくる。


「この町で、暴れようってか。それこそ、何人死ぬかなァ」


 キザミの背後に、広がる町並み。

 背中から、地上に降りていく。


「チッ。待てぇ」


 追いかけるグミちゃん。


「ここは、演劇場のようなところね」


 キザミの入った建物に入ると、歌舞伎の舞台だ。


「ひっ!」


 人影が動く。


「そこね! ハァァァアア」


 魔法陣を出して、三角形に空間を切り取るグミちゃん。


「うわ、なんだ!?」


 その中に、捕らえることに成功した。


「このまま、遠くまで持って行って決着をつけてやる!」


 三角形の中に、色々と入れたまま空へと舞い上がるグミちゃん。


「てぇーへんだ、てぇーーへんだ!」


 夜が明けて、銭形が町を走る。


「どうしたんです、朝っぱらから」


 クニヤスが、呼び止めると、


「ダンジュウロウさんが、ゆうべから姿を消してるっていうんだよ」


 そう話す銭形。


「えぇぇっ! 近いうちに見に行こうと思っていたのに」

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