第26話 にゃんこちゃん
「うぅぅ」
男が、雪女に生気を吸われている。
「今すぐ、助けたいが………」
くやしそうに、吸われているのを見るクニヤス。
「すぐ助けるニャ!!」
そう言って、クニヤスの背中を飛び蹴りするネコ。
「わわっ」
よろけるように、茂みから出るクニヤス。
「クニヤス!」
あたっちも、茂みから飛び出す。
「なんじゃ、またお前らか」
「仕方ない、オイラたちだけでやるぞ」
クニヤスは、固くなっている。
「なんだ、鎧武者はいないのか。お主ら、死にに来たのか?」
半笑いの雪女。
「うるさいわい」
クニヤスが、威勢だけは負けまいと息巻く。
「クニヤス、下がってて」
あたっちが、クニヤスの前に出る。
「でも………」
言葉につまるクニヤス。
「あたっちが助ける。命にかえてでも」
やるしかない。
「うーん、なにか作戦を考えないと」
頭をひねるクニヤス。
「でゃあああ」
おもいきり振り上げた錨を、振り下ろす。
「ふっ、その攻撃は見切った」
スッと、横によける雪女。
錨が、地面をえぐる。
「じゃあ、こうよ!」
地面に埋まった錨を抜くと同時に、カギの部分を、雪女の背中に引っかける。
「グフッ、ちょっとはやるようになったわね」
たしかな、手応えがあった。
「まだまだッ」
そのまま、たたみかけるように攻撃を繰り出すあたっち。
「もう、あなたの攻撃は、当たらないわ」
目に見えない早さで、動く雪女。
「気をつけるニャ!」
ネコが、おしえてくれる。
「えっ!?」
気が、つかないうちに背中が凍りかけている。
「フフフ」
薄ら笑いを、うかべる雪女。
「ッ………手応えがない」
錨を振っても振っても、当たらない。
「アハッ」
スルッスルッと、よける雪女。
「ハッ! ハッ! ハァーイッ!」
ダメだ。こっちの体力がもたない。
「当たらぬわ、そんな大振り」
ギリギリで、よける雪女。
「素早いなぁ!」
完全に、おちょくられているわ。
「なにか、動きを止めないと………そうだ」
クニヤスが、なにか思いついて紙に描く。
「ほーら、ほーら」
目の前を、ゆらゆらと挑発する雪女。
「ハッ! はぁはぁはぁ」
さっきから、地面に穴ぽこ開けて、耕しに来たんじゃあないわよ。
「もう、おしまいかい?」
顔を、あたっちの顔に近づける雪女。
「まだまだぁ」
横に、大振りする。
「よし、これで。リリ、気をつけて!」
クニヤスが、合図を送ってくる。
「あっ、うん」
なにか、思いついたのね!
「なんじゃこれはッ。ギャアーーーーー」
雪に覆われた地面に、亀裂が入ると、雪女のいる下から、無数のツル植物が生えて、雪女を拘束する。
「動けば動くだけ絡みつくノバラだ」
雪女の白い着物に、赤い血がにじむ。
「ぅぅう、こんなもので!」
もがく雪女。着物が引き裂かれる。
「わっ、リリ早く!」
脱出する前に。
「うん。ハァアア!」
力をこめて、錨を振り上げる。
「うわっ、待て」
ゴーン
雪女の脳天に、直撃する。
「クワッ」
白目をむく雪女。
「やッ………やったわ」
どうやら、やっつけたみたい。
「わーっ、やったねリリ!」
よろこぶクニヤス。
「いいえ、クニヤスのおかげで勝てたのよ」
やっぱり、たよりになるわ。
「いや、そうでもないけど」
謙遜するクニヤス。
「いや、まだニャ!」
ネコが、目をひんむぐ。
「なぬ」
クニヤスが、口をあんぐりと開ける。
「はぁぁー、はぁぁー」
そこには、脱出した雪女。
「服が………」
雪女は、足袋しか身につけていない。
「お主ら、ゆるさんぞ」
怒りにみちた表情の雪女。
「キャア! 全裸!」
あたっちは、ビックリ!
「えっ!? キャアーーーーー」
自分が、素っ裸なのを見て、目が点になり、青白い顔色が真っ赤になって、その場にしゃがみこむ。
「ちょっ………」
じっくり見るクニヤス。
「ちょっと、クニヤス見すぎ!!」
クニヤスの視界を、あたっちが手で隠す。
「いや………美しくてつい」
見とれていたクニヤス。ほかの人も、そうやってやられたのね。
「あたっちというものが、ありながら」
イラッとするわ。
「人間ごときに、裸を見られたぁぁひーーん」
なぜか、泣き出す雪女。
どうやら、男を誘うくせに裸は見せないのね。
「………なんだ? そんなにイヤなら元いたところに帰るんだな」
クニヤスが、そう言うと、
「………うん、そうする」
吹雪が巻き起こり、姿を消す雪女。
「なんだったんだ、いったい」
首を、かしげるクニヤスとあたっち。
「でも、勝ったみたいよ」
よろこぶあたっち。
「なんか、久しぶりに陽光を見たな」
厚い雲が晴れて、夕陽が見える。
「キレイね」
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