第25話 跳ねるタヌキ
「うぅ、さぶっ」
喪服から着替えて、またクニヤスの家の前で集合する。
小降りではあるが、絶え間なく雪が降る中、妖怪の捜索を続けるあたっちたち。
「二手に、別れて捜索しよう。私とクニヤスくんで、こっちを───」
と、ミツクニさんが言うので、すかさず、
「ダメ! あたっちとクニヤスが組むわ」
クニヤスの腕を掴むあたっち。
「そうか………気をつけてな」
残念そうに、武者フウウと虚無僧ハタノと一緒に歩いていくミツクニさん。
「はい」
雪が積もった道を、踏みしめて歩く。
「雪女だけでも、先に倒さないとね」
あたっちが、そう言うと、
「でも、リリは先に鬼を倒したいんじゃないかな?」
あたっちに気をつかうクニヤス。
「うん………でも、あたっちの力じゃあ無理かも」
いくら、敵討ちがしたいって言っても。
「一人じゃないよ。みんなで倒せばイイんだよ。すいません、雪女見ませんでした?」
行き交う人に、雪女の行方を尋ねるクニヤス。
「………ありがとうクニヤス」
少し、ほっこりする。
通りの向こうから、信楽焼のタヌキが跳ねて来る。
「いいや、と………うわぁ」
大きく跳躍した置物が、クニヤスを押し潰す。
「クニヤス!?」
いきなりの攻撃で、ビックリするあたっちとクニヤス。
「あーっ! つぶれるッ………」
雪に、めりこむクニヤス。
「クニヤスに、なにすんのよーッ」
パコーーン
錨を、横に強振してタヌキを破壊すると、
「にゃあーっ」
中から、ネコが飛び出す。
「エッ!?」
また、ビックリするあたっち。
「あーっ、やっと出れたニャ」
前足を揃えてお尻を突き出し、伸びをするネコ。
「ねこ! しゃべってるし」
また、変な妖怪が出たと、身構えるあたっち。
「信楽焼のタヌキに、踏み潰されるところで、中に逃げこんだら出れなくなったニャ」
緊急回避しようとしたら、中に入ってしまったらしい。
「そ、そうなの?」
いつから入ってたのよ。
「はいニャ」
二本の足で立つネコ。
「そうか、よかったな」
クニヤスが、そう言うと、
「お礼に、なにかしてあげたいニャ」
と、ネコが言う。
「そんなのはイイから、早く寝床にお帰り」
あたっちは、ネコが寒そうなので気を使ったのだけど、
「そうだ、ちょっと聞きたいことがあって」
クニヤスが、なにか思いつく。
「なんだニャ?」
「雪女って、どこにいるか見なかったか? 近所にあたっているんだが、みんな口をつぐんでしまって」
雪女を見たか聞く。
「知るわけないでしょ。ずっとタヌキの中にいたんだから」
クニヤスに、つっこむあたっち。
「知ってるニャ」
「ホラ、知ってるって………知ってる!?」
「穴から見たから、案内するニャ」
タヌキの目に穴があったらしい。
「おお、たのもしい」
「待ってよ、二人ともぉ」
走るネコを全速力で追うクニヤスに、置いていかれまいとあせるあたっち。
「ここニャ」
町外れにある、一軒の空き家。
「廃屋………寺か神社。クニヤス、踏み込む?」
今にも、森に埋もれそうで気味が悪い。
「いや、ミツクニさんたちを待とう」
様子を見ることにするクニヤス。
「そうね」
中腰から、座って眺めていると、
「うぅぅ………」
勢いよく、扉が開いて、中から顔色が青白い男が、フラフラと出てくる。
「ちょっ、中から誰か出てきた」
あたっちが、クニヤスの肩を叩くと、
「………全裸だな」
顔から、つららをたらしているが、素っ裸
ね。
「キャッ」
思わず、顔を隠すあたっち。
「うぅぅ」
「待って、どこに行くの?」
中からもう一人、女性だ。
「たぁっ………助け………」
よろけながら、雪女から逃れる男。
「ねぇ! このままじゃ、あの人死んじゃう」
クニヤスの背中を掴んで揺らす。
「いや、マズいって」
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