第23話 こむそうや
「ムッ………」
流人船転覆の騒動から三日ほどたち、あいかわらず降り続ける雪を、辻立ちしながら見上げる
通りを歩く女性に、不穏ななにかを感じる。
「どうも」
軽く、会釈する女性。
「しばし、待たれよ」
女性の行く先を、たち塞ぐ虚無僧。
「はい。わたくしに、なにか?」
少し、口角を上げる女性。
「お主、名をなんと申されるか?」
いきなり、名前を聞く虚無僧。
「はい。養老怪姫と申します。あなた様は?」
サラッと、受け答える養老怪姫。
「わしは、高野衆のハタノと申す。つかぬことを、お伺いいたしますが」
「はい、なんでしょう?」
ニヤニヤする養老怪姫。
「その、首にかかった
養老怪姫の首には、真っ赤な珊瑚の大粒な数珠が、かかっており、
「………これですか?」
少し、揺らして見せる養老怪姫。
「はい………」
「イイですけど」
ちょっと、養老怪姫が持ち上げると、
「拝見いたします。んッ」
おかまいなしで、ガッと掴むハタノ。
「どうか、なすったんですか?」
余裕の表情を見せる養老怪姫。
「すまぬが、これをどこで?」
顔色の曇るハタノ。
「とある方に、いただいた品です」
言葉を、にごす養老怪姫。
「これは、チョウソカベという仲間が持っていた物に相違ない」
高野衆の仲間の大切にしていた物なので、記憶に残っていた。
「あの方、チョウソカベという名でしたか」
養老怪姫が、鼻で笑いながら言うと、
「して、そのチョウソカベ氏は?」
感情を、抑えつつ聞くハタノ。
「カンネンさんと、テンコツさん共々、おなくなりになりました」
あっさりと、答える養老怪姫。
「えっ………なぜ、そのようなことに」
ビックリするハタノ。
「………」
黙る養老怪姫。
「
と、なにかを察したハタノが聞くと、
「わたくしのおなかに」
正直に答える養老怪姫。
「えっ、冗談はよしてく………まさか」
顔色が、青ざめるハタノ。
「フフフ」
スーッと、逃げていく養老怪姫。
「詳しく聞かせてくれ!」
追いかけるハタノ。
雪に、足をとられながら走るが、
「アハッ」
「おーい! どこに行ったんだ!?」
角を、曲がったところで、姿を見失う。
「どうされましたか?」
そこに、ミツクニさんが通りかかる。
「こっちに、髪の毛の長い女が来ませんでしたか?」
と、ハタノが聞くと、
「はて、見てはおらぬが、そのおなごがいかがしたかな?」
「いえ。わしの仲間を喰ったと言うので」
包み隠さず、話すハタノ。
「それは、ただ事ではないな」
腕組みするミツクニさん。
「はい」
「ついて来てくだされ。そこで、いきさつを聞かせて欲しいですな」
ハタノの話に、食い付くミツクニさん。
「あっ、はい」
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