第4章
第22話 荒れ地
「ハァッハアッッ」
ヤギュウが、肩で息をしている。
目の前には、折れた刀を持って横たわるゴエモン。
「クッ………修行が足らぬでござるか」
ゴエモンは、ヤギュウと竜一匹を相手に奮戦したのだが、力つきた。
「さあ、大人しく竜に喰われろ!」
ヤギュウは震える足で、ようやく立っている。
「もはや、これまでかッ」
空を見るゴエモンの視界に、口を開けた竜の顔が見える。
「ちょっと待った!」
グミちゃんの声だ。
「グルル。ナゼトメル」
竜が、そう聞くと、
「だから、人を喰うなって言ってるの!」
何回も、同じことを言わせるので、イラッときてしまったグミちゃん。
「おい、食べたがっているんだ。なんとか食べさせてやってくれんか?」
ヤギュウが、そんなことを言いだすから、
「ダメだっての!」
ますます機嫌が悪くなるグミちゃん。
「ソウナノカ。ナラ、オ前カラ」
ゴエモンに、向かっていた竜がグミちゃんに向かう。
「なに? ワタシを喰おうって?」
半笑いのグミちゃん。
「ソウダ」
よだれを垂らす竜。
「あんた、イイ根性してるじゃないの」
魔法の杖を握るグミちゃん。
「ウォーーー」
一気に、グミちゃんへと距離を詰める竜。
「へん。そんな突進で」
華麗に、飛んでかわすグミちゃん。
「グオ」
直角に、向きを変えて襲う竜。
「このワタシが」
巧みに、かわすグミちゃん。
「ギャオ」
勢いよく、口を閉じる竜。
「喰えると」
「ガッ」
「思ってるなんて」
左右に、小刻みに動いて翻弄するグミちゃん。
「ゴォ」
「甘いわよ!」
素早く、魔法陣を描くと、竜の胴体の一部が、円筒形に切り取られたように消えて生身と血が出る。
「ギャアーッ」
痛みに、のたうち回る竜。
「ホラ、もう一発!」
別の部分も、円筒形に消える。
「ゲッッッ」
血を、吹き出す竜。
「どう? 今なら回復魔法をかけてやってもイイけど」
口角を上げるグミちゃん。
「ハァァァハァァァ人間風情ガ、ワレニ命令ナド」
強がる竜に対して、
「あっそ。ちなみにワタシは人間じゃない」
と、言って竜の首へ飛ぶグミちゃん。
「グヘェェ」
首を、切り落とされた竜。
「さあ、どうしようかヤギュウさん?」
地面へと、降りてきたグミちゃん。
「江戸へ向かおう」
ヤギュウは、まだ作戦を続けるつもりだ。
「うん。あっ、そういえばもう1匹いたでしょ竜が」
周りを見回すグミちゃん。
「あれは、先に江戸に向かったはず」
首を、かしげるヤギュウ。
「えっ、入れ違いになっちゃったのか」
ビックリするグミちゃん。
「しかし、竜を手なずけるのは無理かと」
腕組みして言うヤギュウに、
「そうだね。人を喰う前に退治した方がイイかもね」
今回で、懲りたグミちゃん。
「こいつは、どういたそうか?」
地面に、寝転がるゴエモンを見て言うヤギュウ。
「うーん、もう動けそうじゃないし、ほっとくわ」
変に、回復魔法を使うと足止めになりかねないので、放置することにした。
「よし、それならいざ江戸へ」
歩いて向かおうとするヤギュウに対して、
「さあ、これに跨がって」
太い魔法の杖に、乗るように言うグミちゃん。
「お、おう」
慎重に乗るヤギュウ。
「飛ばすわよ~」
「うわ、浮いてギャアー」
足を、ジタバタするヤギュウ。
「騒いでると、舌噛むわよ!」
ものすごい早さで飛ぶ。
「ひぃぃ~~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます