第20話 鋭い爪
「ピィ!!!」
翼を広げて、鳳凰が走りだす。
「飛べ!」
すごい風を巻き起こし、空へと舞い上がる。
「おおっ、本当に飛んだ」
船乗りたちが、口を開けて空を見る。
「すごい。明るくなったぞ」
捜索する漁師たちから、歓声があがる。
「おーい、見つかったぞーッ」
あたっちの、おとうちゃんが見つかり、舟の上にあげられる。
「ハァッ、ハァッ。助かったァ」
陸まで運ばれ、むしろに横になるおとうちゃん。
「おまえさん!」
あたっちの、おかあさんが駆け寄る。
「おう、帰ってきたぜ。うぉッ、海の中の方が、あったけぇや」
そう言って、身震いするおとうちゃん。
「もう、おまえさんてば」
笑い合う二人。
「ありがとうクニヤス!」
クニヤスに、あたっちたちが感謝すると、
「いや、オイラは」
照れ笑いするクニヤス。
「ううん、うれしい」
クニヤスの手を握る。
「ま、とりあえず助かってよかった」
クニヤスがそう言うと、どこからか、
「よくねぇよ………」
怒りに満ちた声がする。
「えッ?」
振り返るあたっち。
そこには、一人の男が立っている。
「なんだ? なんだ?」
野次馬が、ざわつく。
「ぅおこッ、こいつが」
おとうちゃんが、上半身を起こす。
「えッ!?」
おかあさんが、その様子を見て、ただごとではないと察する。
「まず、お前からだ」
男が、クニヤスを指差す。
「うわぁ!」
あたっちが、地面に置いた錨を拾うために、しゃがんだ時、
「ッツツ」
体の前で、腕を交差して防御するクニヤス。
だが、鬼の一撃は受けていない。
なぜなら………
「ギャハッ」
クニヤスの前に出てかばい、鬼の爪の餌食となった、おかあさん。
「おっかさん!」
倒れこむと、腹から出血し、口からも血が出る。
「チッ、邪魔しやがって」
悪態をつく鬼。
「おのれ」
クニヤスが、怒りをあらわにする。
「クニヤスくん、ダメだよ! そいつは鬼だ!」
おとうちゃんが、そう言うと、
「なにっ、鬼だと」
「キャアーーー」
「逃げろォ」
野次馬が、一斉に散り散りになる。
「あーあ。喰いそこねちまったじゃねぇか」
キザミが、右手の爪に付いた血を舐める。
「こいつ………」
髪の毛が、逆立つクニヤス。
「クニヤスくん、下がって」
ミツクニさんが、鬼と対峙する。
「そうよ、あたっちがこんなヤツ、倒してあげるわ」
おとうちゃんが、むしろにおかあさんを寝かせるのを見て、鬼に錨を構える。
「きみも、下がりなさい」
ミツクニさんが、あたっちにも逃げるように言うけど、
「えっ、あたっちだってやります!」
クニヤスを、守りぬくわ。
「足手まといになるだけです」
断言するミツクニさん。
「えっ、ひどい」
そこまで言わなくて、よくない?
「おい、ゴチャゴチャうるせえな。じじいと、痩せたガキじゃあ喰うところがねえんだ!」
キザミが、わめきちらす。
「なんと」
ビクッとなるミツクニさん。
「なんですって! 胸も、ちゃんとあるわよ!」
失礼しちゃうわ。
「うるせえって、言ってんだろ!」
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