第17話 幽霊か妖怪か

「キミが、幽霊か妖怪かはわからないが、聞かせて欲しい」


 クニヤスが、武者フウウにそう言うと、


『はい』


 特に、自らを幽霊とも妖怪とも言わない武者フウウ。


「ヤツらは、何者なんだい?」


 単刀直入に聞くクニヤス。


『アタシも、よくは知らないんですが、ヤギュウという男と、グミという女性が結託して騒動を起こしているみたい』


 ありのままを話す武者フウウ。


「なるほど。ヤギュウという男が首謀者と見てイイのかな?」


 すずめが、そう聞くと、


『そうです。グミちゃんは、魔法使いで───』


 武者フウウが、そう話している途中で、


「魔法? 幻術の類いか?」


 すずめが、ビックリして聞く。


『まぼろしではないです』


 頭部を、左右に振る武者フウウ。


「さようか。つづけて」


『はい。次々と魔物を召喚して、この地を狙っていたようです』


「それを、見ていたと。うーん。すずめちゃんは、どう思う?」


 クニヤスは、腕組みをして考えこむ。


「ヤギュウですか。思っていたより、大きな集団かも知れない………」


 少し、顔色が変わるすずめ。


「と、言うと?」


「ウワサで、石工集団が暗躍あんやくしており、その頭がヤギュウであると聞いたの」


 神妙に、言葉を言うすずめちゃん。


「石工集団………そんなことをするのかな」


 クニヤスは、半信半疑だ。

 雪女なんて、江戸で放ったら大混乱するに決まってる。


「あくまでも、ウワサだ。少し、気になることがあるので、これにて」


 スッと、立ち上がるすずめ。


「えっ、帰っちゃうの?」


 これから、ゆっくりしようって時に。


「晩めしは、食べていかんの?」


 あたっちも、引き止めるのだが、


「先を、急ぎますゆえ。ごめん」


 そう言って、天井裏に入るすずめ。


「あらーぁ。行っちゃった」


 クニヤスが、天井を見つめる。


『なにか、マズいこと言っちゃったかな?』


 武者フウウが、心配になる。


「いや、大丈夫でしょ!」


「クニヤスどの~」


「ん。なんか、誰か叫んでない?」


 遠くで、自分の名前を呼ばれた気がしたクニヤス。


「気のせいでしょ。さあ、鍋を作ったわ」


 あたっちは、すずめちゃんが食べてくれなかったのが、気になった。


「わー、うまそう」


 鍋を、囲炉裏にかけると、


「クニヤスどの~!!!」


 玄関の戸か、勢いよく開き、ミツクニさんが突入して来て、クニヤスに抱きつく。


「わああっ! ミツクニさん」


 いきなり、ミツクニさんにほおずりされて、なすがままのクニヤス。


「よく、ご無事でぇ~~~」


 半べそのミツクニさん。


「ちょっ、ミツクニさん。クニヤスから離れてッ」


 ミツクニさんのソデを引っ張るあたっち。

 でも、引き剥がせない。


「おぉ~、よかったよぉ~~」


 さらに、スリスリするミツクニさん。


「あっ、あの」


 クニヤスが、少し困ったような声を出す。


「なんだいクニヤスくん」


 クニヤスの顔を見るミツクニさん。


「よかったら、一緒にご飯───」


 クニヤスが、言いかけると、


「うんうん食べる」


 うなずくミツクニさん。


「そうですか」

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