第16話 任務
「この冷夏の原因は、お前か!」
クニヤスが、震えながら言うと、
「いかにも」
堂々と言う雪姫。
「だったら、もう雪を降らすのをやめてくれ!」
と、クニヤスが懇願するが、
『ダメだよ。ヤツらが聞くわけない』
鎧武者が、首を横に振る。
「ヤツら? どういうことだって?」
クニヤスが、鎧武者の言い回しに引っ掛かりを感じる。
「お前が、知ることではない!」
そう、雪姫が言うと、また氷の円盤を作って、今度はクニヤスを狙う。
「あぶない!」
その氷の円盤の軌道に、駆けていくリリ。
間に合って、錨で受け止めるのだが、
「リリ!」
思わず叫ぶクニヤス。
「しまった」
錨に当たって、回転を受け止めていたが、勢いに押されて外れて、クニヤスの方へと飛んで行く。
「うわぁ」
身を、伏せるクニヤス。
「くらえええッ」
口角を、上げる雪姫。
「ハッ!」
クニヤスの目の前に、誰かがあらわれて、刀で氷の円盤を斬る。
「………すずめ」
あらわれたのは、すずめだ。
「先輩!」
あたっちも、ビックリして声が出る。
「待たせたわね」
立ち上がって、刀をひと振りするすずめ。
「どうして?」
クニヤスが聞くと、
「鎧武者の動きを、ミツクニさまに伝えて、また監視するように戻って来たところよ」
ミツクニさんに、報告しに行ったって、ミツクニさんって何者なのかしら。
「そうなんだね」
「よし、雪女を倒そう」
すずめちゃんが、雪姫に向かって構える。
「うん、すずめ先輩!」
あたっちだって、やってやるわ。
「何人増えようが、わらわの敵ではない」
苦笑いする雪姫。
「くぅ~ッ、言わせておけば」
雪姫の態度に、イラつくあたっち。
「リリ、挑発に乗っちゃダメ」
すずめちゃんが、なだめる。
「はいっ」
「しかし、分が悪い。出直すとしよう」
手のひらを、返したように、吹雪を巻き起こして、姿を消していく雪姫。
「待て! クッ………」
視界が、さえぎられて見失う。
「行ってしまったか」
吹雪がやんだら、姿はなかった。
「さて。鎧武者」
残った鎧武者と話すクニヤス。
『はい』
「お主に、聞きたいことがある」
クニヤスが、そう言うと、
『………答えられることなら』
「よし、ついてまいられよ」
『はい』
クニヤスの家に、ゾロゾロと入って行く。
「さあ、楽にして」
釜戸から、墨を囲炉裏に持って来るクニヤス。
けっして、広い部屋ではないが、どうにか四人座れそうだ。
『………』
「甲冑を着たままでは、窮屈であろう。脱ぐのを助けてやろうか?」
すずめちゃんがそう言って、
『さわらないで!』
強く拒否する鎧武者。
「おお、それはすまなんだ」
あきらめて、座るすずめちゃん。
『どうしても、脱げない事情があるのです』
鎧武者には、脱ぎたくない理由があるらしい。
「そうか。ならば脱がなくてよい」
鎧武者の、お面の奥に顔が見えない。
『はい』
「それで、お主は名をなんと申す?」
クニヤスが、聞くと、
『………フウウと言います』
言いたくなさそうに、答えるフウウ。
「そうなんだ。オイラはクニヤス。この子がリリ。そして、オイラの1こ上の渋すずめちゃん」
「よろしくね」
すずめちゃんが、ニッコリと笑う。
「よろしく」
あたっちも、少しほほえむ。
『はい。よろしくお願いします』
頭を、下げるフウウ。
「フウウちゃん、お腹すかない?」
あたっちが、そう言うと、
『大丈夫です───』
そう言うと同時に、フウウのお腹が、か細く鳴った。
「かわいい音が、聞こえたわね」
すずめちゃんが、いたずらっ子のように笑う。
『………はずかしい』
体を、くねらせる鎧武者。
「すぐに作るからね」
あたっちが、土間に降りて釜戸に薪をくべる。
『はい………』
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