第11話 足止め

「いやなに、この子らと通りかかった時にチラッと………」


 ヘイゾウの問いに、笑顔で答えるミツクニ。


「左様にござるか」


 なにか、手がかりがあるかと思っていたが、アテが外れたヘイゾウ。


「そういえばリリ」


 クニヤスが、振り返ってあたっちを見る。


「うん? どうしたのクニヤス?」


 急に、神妙な顔になって。


「なんで、錨なんか担いでいるんだ?」


 クニヤスが、そう聞いてくるので、


「でっ、今ごろ?」


 クニヤスの家に行ったら、もうミツクニさんがいて、二人の会話に入れない雰囲気だったけども!


「ああ、今朝見た時には、どこかに運ぶ途中かと思ったんだけど………」


 ちゃんと見てたの!?


「いや、今朝言ったでしょ? クニヤスが襲われた時には、あたっちが守るって」


 ちゃんと、そう言ったよね?


「あぁ、寝ぼけてて覚えてない」


 首を、かしげるクニヤス。


「えーっ!」


 ちゃんと、聞いてよ!


「ハハハ、元気なお嬢さんだ」


 ヘイゾウは、そのほほえましい二人のやりとりに、頬がゆるむ。


「すいません、おてんばで」


 クニヤスが、頭を下げる。


「ちょっとぉ」


 なによなんなのよ!


「ハハハ、無理しないようにして欲しいで

ござるな」


 ヘイゾウは、ニヤリと笑う。


「はい。よく言っておきます」


 クニヤスが、あたっちの頭を押さえて言う。


「もおーッ」


 二人して、子供扱いして!


「それでは」


 そう言って、颯爽と立ち去るヘイゾウ。


「はい、ごきげんよう」


 ミツクニさんも、頭を下げる。


「早く、解決しなければな」


 歩きながら、鬼の形相になるヘイゾウ。


「でもさぁ、リリ」


 ツタマヤのところに向かって、歩き出す三人。


「えっ、なに?」


 クニヤスが、頭の後ろで手を交差して、チラッとあたっちを見る。


「オイラは、リリに守ってもらうより、リリを守りたい」


 ボソッと、そんなことを言うクニヤス。


「えっ………それって」


 やだ、ちょっと。頬が赤くなっちまうじゃないのさ。


「ついたぞクニヤス。ここじゃ」


 ミツクニさんが、割って入る。


「はい」


 目を、輝かすクニヤス。


「ちょっと、イイところだったのにぃ」


その頃


「竜は、江戸に持って行くのはあぶないかと」


 ヤギュウは、少々懸念を口にする。


「そうねぇ。どうせまた人を喰うかも知れないし」


 グミちゃんも、竜の調教をあきらめかける。


「お主らか。この騒ぎの元凶!」


 そこに、立ちふさがる集団。


「ムッ、お前はテンコツ!」


 苦々しい表情を見せるヤギュウ。


「覚えてくれたみたいだな、ヤギュウ!」


 お揃いの僧侶のような集団が、横一列にいる。


「お前らと、ここでやりあうつもりはない」


 あせりがにじむヤギュウ。


「お主らになくても、こちらにはある!」


 ビシッと、ヤギュウを指差すテンコツ。


「なになに、知り合い?」


 グミちゃんは、いきなり目の前に出て来た集団に、ビックリしてキョロキョロする。


「ヤツらは、高野衆です」


 ヤギュウが、グミちゃんに耳打ちする。


「って、誰よ?」

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