第2章
第8話 鎧武者
『………あれ、開かないぞ』
あれから、2~3日たち。
鎧武者が、農村の家々を1軒ずつ回っている。
『えいっ!』
思い切り、蹴破る鎧武者。
「ヒイイ! だれだんべ、おめぇ」
土間にいた村人が、腰をぬかし倒れる。
『逃げてください。この村も魔物にのみこまれます!』
しばらく、力を使いはたして動けなかったグミちゃんが、徐々に山を下りだした。
「はぁ? おめぇは、なにさ言ってるだ?」
まったく、理解出来ていない村人。
『逃げてくださいね、では』
その頃
「キャア! 妖怪!」
こちらは、江戸の街中。
部屋に、あがりこんだ妖怪に悲鳴をあげて、旦那にすがる女。
「この野郎!」
棒を持って、庭先まで追いかけると、
「ピアー」
棒を、振りかぶり、一気に振り下ろす旦那。
妖怪は、グッタリしてしまった。
「おもい知ったか」
妖怪を、見下ろす。
そこへ、
「おい、きさま!」
侍の一行が、たまたま通りかかる。
「ひっ! なんでございましょう?」
地面に、正座する夫婦。
「なにを、やっておる」
刀に、手をかける侍。
「いっ、いえ」
両手を振る旦那。
「あんたぁ!」
女房が、叫ぶ。
「そこになおれ。成敗いたす」
刀を抜く侍。
「ひゃあっ!」
「でぁぁあ」
金属同士が、ぶつかるにぶい音が響きわたる。
「ムッ、きさま。なにやつ」
侍が、刀を振り下ろしたが、鎧武者が刀で受ける。
『あぶないじゃないですか?』
こもったような声。
「邪魔をするなら、お主も容赦しない」
突然あらわれた鎧武者に、ひるむ侍。
『とりあえず、剣をおさめようよ』
なんとか、穏便に済ませたい鎧武者。
「うるさい。お主もたたっ斬る」
間合いをとる侍。
『仕方ないわね、痛いわよ』
刀を、構える鎧武者。
「でゃあああッ」
思い切り、刀を振る侍。
『ハッ! なによ、その大振り』
しかし、ヒョイとかわす鎧武者。
「なんの」
『ハーッ』
鎧武者が、侍の太刀筋をしゃがんでよけて、
「グフ!」
横にふった刀が、胴体に当たって倒れる侍。
「佐久間殿!」
周囲の侍たちが、心配して集まる。
『あー、大丈夫。すぐ処置すれば、助かるから』
と、鎧武者が言うが、
「おのれぇ」
周囲の侍たちが、一斉に抜刀する。
『いや、まだやる?』
あきれる鎧武者。
「仇を討つ!」
叫ぶ侍。
『おいおい、まだ死んでないって』
軽く当てただけなのだが、
「一斉に斬るぞ!」
「「おう!」」
グミちゃんに、刀を向けジリジリと間合いをつめていく。
『やるしかないようだね』
すごい素早さで、移動する鎧武者。
「ギャア」
「グオッ」
「ぐぇっ」
一気に、まとめて倒してしまう。
『ふぅ、大丈夫ですか?』
刀を、鞘にしまって旦那に手をさし出すが、
「ひいい! 化け物ォ!」
そう言って、手を払いのける旦那。
怪物に、見えてしまったのだ。
『えっ………』
固まってしまう鎧武者。
「どうした? なんの騒ぎだ?」
そこに、クニヤスとミツクニとリリが通りかかる。
「こっ、こいつが」
仰向けで、逃げながら鎧武者を指さす旦那。
『あの、仕方なかったんです』
刀を右手に持ち、両手を振る鎧武者。
「とりあえず、刀を渡しなさい」
ミツクニさんが、右手を出すが、
『イヤ………』
一歩引く鎧武者。
「私を、信───」
そう言うミツクニさんだったが、
『いやだぁーッ』
すごい速さで、逃げていく鎧武者。
「おっ、待つんじゃおい待たぬか」
止めるミツクニ。
「行ってしまった。追いましょうか?」
クニヤスが、そう言うと、
「いや。すずめや」
「ハッ!」
ミツクニさんの呼び掛けに、樹上からフワリと降りてくるすずめ。
「うおっ! 出た」
ビックリするクニヤス。
「あいつを、追ってくれ」
「ハッ!」
また、姿を消すすずめ。
「なんだったんでしょ?」
祭りでもないと、飾り物と化している甲冑。
「うーむ。なにか、不穏な動きがあるのやも知れぬ」
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