第7話 ラーメン大好きミツクニさん

「ミツクニさん?」


 ミツクニさんが、手に持っている荷物を見ているクニヤス。

 通りを、闊歩かっぽする妖怪をよけつつ、ラーメン屋へと向かう。


「なんですかな」


「その、つづらには何が入っているのですか?」


 ちょっと、見かけない手提げの入れ物に、興味津々なクニヤス。


「これは、西洋ではトランクと言いましてな。旅行するための荷物が入っておる」


 荷物入れの中身は、旅に持って行く品々が入っているらしい。


「へぇ。あちこち旅に出るのですか?」


 と、クニヤスが聞くと、


「それが、この江戸と鎌倉くらいしかないのだよ」


 と、苦笑いするミツクニさん。


「そうなんですね。鎌倉には、よく行かれるのですか?」


 妖怪を避けつつ、ようやくラーメン屋の行列にたどりつく。


「鎌倉には、紹介本を書く為にな」


 観光地を、案内する書物らしい。


「えっ! 本もお書きになるのですね」


 目を、輝かすクニヤス。


「そう、書物に残そうと思いましてな」


 鎌倉本かぁ、後で読ませてもらおうかな。


「スゴいですね」


 感心しきりのクニヤス。


「さあ、ラーメンを食べながら話そう」


 店内は、ごったがえしている。


「はい」


 やっと、注文したラーメンが届き、


「いただきます」


「「いただきまーす」」


 食べ始めると、


「どうかな」


 あたっちたちが、麺をすする姿をニコニコしながら見ているミツクニさん。


「うわ、おいしい」


 あたっちは、はじめてだったけど、こんなおいしいのあるなんて。


「それはよかった。ところで、もしよかったら版元のツタマヤを紹介してあげよう」


 ミツクニさんが、そう言うと、


「えっ! イイんですか?」


 ビックリするクニヤス。


「もちろん」


 うなずくミツクニさん。


「うれしいな」


その頃


「テンコツさま、お呼びで?」


 かっぷくのよい大男が、テンコツのいる山の道場にあらわれる。


「おう、カンネン」


 腕組みしたままのテンコツ。


「どうされました?」


 召集があるなんて、どうしたのか聞くカンネン。


「みんなが、そろってから言おうとは思っているが、ア能衆に不穏な動きがある」


「それは………」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る